札所で出会える あまい味

「長い道のりを乗り越えられますように…」。 そんな優しい気持ちが込められた札所の甘味。 誕生のきっかけやそこに込められた思いを僧侶に伺った。


竹林寺(ちくりんじ)×竹林寺羊羹

竹林寺_竹林寺羊羹山田健真(やまだ けんしん)僧侶

竹林寺_竹林寺羊羹「竹林寺羊羹」。厳選された素材で作られる本格的な羊羹。すっきりとした後味で程よい甘さが疲れを癒やしてくれる。竹林寺に足を運んだ記念にぜひ。

お遍路さんの思いの名物甘味がここに

県内で広くその名が知られている、高知市の五台山に開創された第31番札所「竹林寺(ちくりんじ)」。ここで出会えるのが、寺の名を冠した「竹林寺羊羹」。歩きながらでも手軽に食べられるようにと開発されたもので、竹のような筒状の容器に入っており、食べたい分だけ押し出して付属の糸で切って食べられる。15年ほど前に誕生し、日持ちもすることから、歩き遍路のみならず、観光の土産としても愛されている。僧侶の山田健真さんは「接待とは、自分たちが大切にしている信仰を、同じように大切にしてくださるお遍路さんに対して、感謝や次の札所までの長い道のりを乗り越えられるよう英気を養ってもらうための気持ちの表れです」と言う。感謝や激励の形としてお接待があり、竹林寺羊羹という甘味がおもてなしのひとつの形となっている。


岩本寺(いわもとじ)×朔日餅(ついたもち)

岩本寺_朔日餅窪博正(くぼ はくしょう)住職

岩本寺_朔日餅ここにしかない幻の大福「朔日餅(ついたもち)」。外側には赤えんどう豆、中には岡田商店自慢のあんこがたっぷり。程よい塩気が疲れた体にちょうどいい。

毎月1日、20個限定でお目見えする豆大福

四万十町の第37番札所「岩本寺」で今から約2年前、窪博正住職が「何か名物になるものを作ろう」と地元の老舗米穀店「岡田商店」に持ちかけたことを機に誕生した「朔日餅」。モデルにしたのは住職が修行時代に食べていた京都の有名店の豆大福で、「それまで大福は作ったことが無かった」という岡田商店の三代目の妻・博恵さんが試行錯誤を重ねた。販売しているのは岩本寺のみ、数は20個限定で、早い時間に売り切れてしまうことも。次の札所までは四国遍路の札所間最長距離の約86キロあり、長い道のりを支える力になっている。「四国では昔からよそから来た人をもてなし、大切にしてきました。私の母が遺してくれた言葉『文化が人を連れて来る』を胸に、これからもこの地を訪れるお遍路さんを大切にしていきたいですね」と語ってくれた。


国分寺(こくぶんじ)×土佐日記

国分寺_土佐日記林 隆光(はやし りゅうこう)住職

国分寺_土佐日記高知の名物土産「土佐日記」は、お客さんから「懐かしい」と言われることが多いのだそう。抹茶と土佐日記でホッと一息。

お接待の歴史を感じられるお寺カフェ

南国市の第29番札所「国分寺」は、かつて土佐の行政の中心地であり、閣殿と呼ばれる部屋で客人をもてなしていた。令和元年からは「お寺カフェ」を始め、現在はその部屋で抹茶と茶菓子の提供を受けられる。お遍路さんや観光客、癒やしを求めて足を運ぶ人など、多くの客人を魅了するのは、部屋の前に広がる緑豊かな庭園。明治時代に造られた庭を眺めながら頂けるのは、裏千家茶道を習っていた妻の声子さんが立てる抹茶と、紀貫之ゆかりの地にちなんだお菓子「土佐日記」。歩き遍路で疲れた身体を少しでもリラックスできるように、またせっかく寺に来てくれたのならば、一足踏み込むワクワク感も提供したいという思いから始めたお寺カフェ。林住職は「お遍路は修行ですが、悩みを抱えて来られた方の気持ちをほぐせる空間にできれば」と話してくれた。


善楽寺(ぜんらくじ)×甘酒

善楽寺_甘酒島田希保(じまだ きほ)住職

善楽寺_甘酒期間限定の愛らしい授与品。善楽寺のテーマカラーのピンクと、寺のキャラクター善くんが描かれたオリジナルラベルも可愛いと評判。

栄養満点の甘酒で手早くエネルギー補給

高知市の第30番札所「善楽寺」で、今年の7月から期間限定で授与が始まった甘酒。「口に入れられるものを寺で授与したい」と考えていた島田希保住職と、「お酒を仕込んでいる間にできるものを作りたい」という製造元の文本酒造の思いが合致し、杜氏が手がけるこだわりの甘酒が完成した。ブドウ糖やアミノ酸、ビタミンなどの栄養成分が豊富に含まれることから「飲む点滴」とも言われる甘酒。 こちらは仁井田米「にこまる」の豊かな香りと甘み、サラリとした口当たりが特徴で、実際飲んだお遍路さんが「生き返った!」と思わず口にしたことも。またパウチ容器に入っていることで持ち運びしやすく、飲んだ後も処理に困らないと、特に歩きのお遍路さんが重宝しているという。「歩き遍路をしていると食べ物のありがたさが身にしみます。疲労回復にも役立ててほしいですね」。