ご当地スポーツ【マラソン文化県】〜高知の地域性を生かして〜

高知のおもてなし 文化が息づく 「高知龍馬マラソン」

 高知の風土を生かした様々なマラソン大会が県内で開催される中、2013年に始まりわずか5年でエントリー数1万人を超える大会へと成長を遂げた「高知龍馬マラソン」。日本の現存最古の路面電車「土佐電気鉄道」が走る国道を皮切りに、田園風景、湾岸線、花海道、そして奇跡の清流「仁淀ブルー」で有名になった仁淀川の河口を駆け抜ける。その42.195kmの沿道を絶え間ない歓声が埋め尽くし、2〜3kmに1回のスパンで設置された給水所では、ご当地グルメが提供される。フルーツトマトやポンカン、ゆずドリンク、さらには地元の婦人部お手製の鰹飯まで。約3000人のボランティアが、ランナーへエールを届ける。

海岸線に沿って続く花海道を駆け抜けるランナーを海の風が癒してくれる。

この龍馬マラソン人気は、土佐のおきゃく文化を背景とする「高知のおもてなし文化」が功を奏したと言っても過言ではないだろう。会場以外にも、高知流のおもてなしは散りばめられている。大会後は「ほろ酔いマラソン」と題してドリンクラリー、打ち上げはひろめ市場でゲストを囲む。参加者からは「大会終わりのひろめ市場はサイコー! こんな楽しいお酒は初めて。初対面のランナーや現地のオッチャンと盛り上がった!!」と多くの感動が寄せられている。


前身は66回の 歴史を重ねた 「高知マラソン」

 「高知龍馬マラソン」の起源は1946年に遡る。前身は、高知新聞社の新憲法公布記念行事としてスタートした「高知マラソン」。「びわ湖毎日マラソン」に次いで国内2番目に古く、2012年まで66回の歴史を重ねたその大会を市民マラソン化させて生まれた。世間は「東京マラソン」をきっかけに市民マラソンがブームに。そんな最中、ポスト龍馬博をにらんだ高知県の一大プロジェクトとして幕を開けることとなる。急ぎ足で開催に至った第1回目のエントリー数は3813名。それが翌々年には2倍を超える7745名、そして5回目で目標に掲げた1万人を優に突破する1万1586名に。その参加者の半数がリピーター、4割が県外から訪れている。

給水所で地域ならではご当地グルメなどを受け取り英気を養うランナー達。

日本最大級のランニングポータルサイト「RUNNET」では、2015年、2016年と中四国で8位にトップ10入り。この勢いを止めまいと、主催者側も新たな展開を試みる。2019年からは、県民からのリクエストを受け、車いすと子どもの部をスタート。7月には関連イベントとして、大会アドバイザーである金哲彦さんのプロデュースのもと、参加者各自が思い思いに10kmを走り、ゴール地点でバーベキューを囲んで親睦を深めるというユニークなランニングイベント「KOCHI FREE 10」も開催された。  「県民の皆さんを始め、地域の理解や協力無くしては成り立たない大会。準備、PRは官民一体となり一年を通して行なっています。来年も飽きさせないよう趣向を凝らしていきます」と、大会を牽引する葛目憲昭さんは意気揚々。来年へとバトンを繋ぐ!


【ご当地コラム ❶】盛り上がる、高知の ご当地マラソン大会
地域性が色濃く 映し出された マラソン大会

高知県では趣向を凝らしたユニークなマラソン大会が多数開催されており、高知県庁のホームページ「高知家のマラソン」への掲出件数だけでも、実に30大会以上。中でも「四万十川ウルトラマラソン」は、25年の歴史と支持率の高さを全国に誇る。四万十川のパノラマを舞台に、途中、高知の名所である沈下橋を駆け抜ける風光明媚なコースで、ランニングポータルサイト「RUNNET」の2019年ウルトラマラソンの部(42.195 km超)において全国3位にランクイン。その他にも、観光名所をコースに取り入れた高知ならではの大会は数多く存在する。「龍馬脱藩マラソン大会」は、坂本龍馬や幕末の志士達が土佐脱藩の際に歩いた道や峠など、龍馬脱藩の道が舞台となり、ランナーの前には、高低差500mを越える苛酷なマラソンコースが立ちはだかる。一方、砂浜百選にも選ばれた名勝入野松原の景観が楽しめる「大方シーサイドはだしマラソン」は、全国で唯一はだしで砂浜を走る。また、夫婦で楽しく走りながら親睦を深める「馬路おしどりマラソン大会」は、手をつないでゴールインするのがルールで、競走よりも楽しさを重視するなど、それぞれに地域の魅力が溢れている。

四万十川ウルトラマラソンで、四万十川にかかる沈下橋を駆け抜けるランナー達。