高知の文学者が綴った名作

次世代へと文学が進化する転換期で高知の作家らは、 常に重要なポジションにあり、日本文学に大きく貢献してきた。 そんな高知ゆかりの作品を時代とともにご紹介。

明治
自由民権運動が高まり新進気鋭の作家が登場
土佐で発祥した自由民権運動の高まりを受けて、数多くの文学的な発言がなされるようになり、小説、新体詩、漢詩、評論、和歌、俳句など多岐にわたって新進気鋭の作家が登場。また高知には、西欧の先進的な思想を紹介する人物らも現れた。

中江兆民がフランスの近代思想を日本へ
フランスの近代思想家・ルソーの「民権思想」を日本へ伝えた中江兆民は、「東洋のルソー」とも呼ばれる思想家。すべての人には天から授かった人権があると説き、政治家としても活動。ガンにより余命1年半と宣告された後に発表した「一年有半」では、政治、経済、社会、文化をひろく批評した。

 

社会主義を広く説き、幸徳秋水が活躍
幸徳秋水は、現在の高知県四万十市出身の思想家。日本に社会主義の思想を紹介した第一人者であり、彼の作品「社会主義神髄」は、当時の社会における貧富の格差の原因や、生産手段の公有化を訴えながら、社会主義とは何か、人々に分かりやすく説いている。大逆事件に巻き込まれ、その人生を終える。

 

 

大正
土佐の反骨精神が大衆文学の流行を牽引
明治の終わりから大正時代にかけて、高知でも大衆文学が台頭。高知出身の探偵小説家や大衆小説家が、全国の文学シーンで活躍した。彼らに共通するのは、郷土に由来する「いごっそう」「はちきん」の反骨精神だった。

能文家、評論家・大町桂月が名を馳せる
酒と旅と自然をこよなく愛し、能文家、評論家として名を馳せた大町桂月。「桂月」の作家名は、よさこい節にも歌われる桂浜の名月に因んだもの。数多くの紀行文を執筆して自然美を伝えたほか、青少年の指導にも注力した。「文章は人格なり、己を欺くなかれ」という言葉を残している。

 


物理学者・寺田寅彦が古典的作品でも功績
科学、芸術、文学、各分野において人物の本質を見抜く直感力を発揮した寺田寅彦。地球物理学や気象学などの分野で功績を上げた物理学者でありながら、夏目漱石らによって文学的な才能を開花されたこともあり、詩心と科学精神が一体化した古典的作品群を数多く残した。「天災は忘れた頃にやってくる」などの名言でも知られる。

 

昭和
郷土を題材にした作品や女性作家の作品が話題に
海と山に囲まれた高知の風土は、文学作家の作風にも大きな影響を与えたと考えられる。郷土を題材にとった作品も多く発表された他、各ジャンルを確立した県内出身の女性作家の活躍にも目覚しいものがあった。

倉橋由美子の「パルタイ」女流文学者賞を受賞
現在の香美市土佐山田町出身の小説家。デビュー作「パルタイ」が女流文学者賞を受賞するなど大きな注目を浴び、以後、実存主義文学の影響を受けた作品を発表した。古典や神話などを題材にした優れた作品や、サン=テグジュペリ「星の王子さま」の翻訳などでも評価され、時代を先取りした作風は、10年早い作家と言われた。

 

芥川賞受賞作家・安岡章太郎が多くの読者を魅了
戦後、病を抱えながらも執筆を開始した安岡章太郎。「悪い仲間」「陰気な愉しみ」で芥川賞を受賞。母の死を題材に描いた「海辺の光景」などの小説や、ユーモアあふれるエッセイでも読者を魅了し、「第三の新人」の旗手として活躍。晩年に描かれた「流離譚」では、時代と人間の関わりを綿密な検証と深い洞察をもって表現した。

 

平成
文学が多様化、サブカルチャーとの融合も進む
時代小説からミステリーまで、作品が多様化し、メディアや漫画、サブカルチャーなど、従来の垣根を越えて新しい文学作品を創造しようとする作家たちが出現。有川ひろ、畠中恵、志水辰夫、山本一力、藤原緋沙子、中脇初枝など、高知出身作家が活躍している。

山本一力の直木賞受賞作「あかね空」映画化
作家として活動する前に旅行会社員やコピーライターなどを務めた豊富な人生経験を活かし、江戸時代を舞台に人情味あふれる時代小説シリーズを多く発表している山本一力。直木賞を受賞したベストセラー「あかね空」は、2007年、中谷美紀主演で映画化もされた。近年では、現代ミステリーのジャンルでも作品を執筆し、活躍している。

 

有川ひろの作品が続々とアニメ・映画・ドラマに
ライトノベルのジャンルでデビューして以来、一般向けの文芸作品にも活動ジャンルを広げ、若い世代を中心に多くの読者から支持を受けている。代表作「図書館戦争」シリーズをはじめ、多くの作品がアニメ化や映画化、ドラマ化されている。自身の出身地である高知県が舞台のエッセイや小説も発表しており、その思いを読むこともできる。

 


日本の歴史

【M元】新政府は江戸の地名を東京に改名、翌年東京が首都に。
【M4】「藩」を廃止して「府」と「県」に一元化。
【M7】板垣退助らが民選議員設立の建白書を提出。これを契機に自由民権運動が始まる。
【M14】板垣退助が日本最初の全国的自由主義政党「自由党」を結成、総理となる。
【M22】大日本帝国憲法が公布、翌年には第1回総選挙が行われ国会が開設。
【M37】日露戦争が起こり日本が勝利。その後、アジア唯一の資本主義国として成長。
【M43】広まる社会主義運動を政府が弾圧、大逆事件が起こる。
【T元】「日本活動写真(日活)」が創業。時代劇を中心に映画が大流行。
【T3】第一次世界大戦が勃発。特需により日本は好景気となるが、その反面、戦後は不景気へ。
【T12】関東大震災が発生。死者・行方不明者は10万人を超えた。
【T14】日本で初めてラジオ放送が開始。この年、大衆娯楽雑誌「キング」が発刊。50万部を超える発行部数を記録。 同年、治安維持法が公布され、社会主義や労働運動が弾圧される。また普通選挙法が公布。25歳以上の男子全員に選挙権が付与。
【T15】1冊1円の全集シリーズ「円本」がブームに。庶民が廉価で読書を楽しむ。
【S14】第二次世界大戦が勃発。多くの国民が軍隊に徴兵されたほか、学徒・女性の勤労動員も。
【S20】女性が参政権を獲得。翌年の選挙にて、日本初の女性代議士が誕生する。
【S26】サンフランシスコ講和会議で吉田茂首相が平和条約に調印。
【S39】東京オリンピックが開催。日本は金メダル16個を含む、29個のメダルを獲得した。
【S44】学生運動が過激さを増し、「東大安田講堂」では攻防戦が行われた。
【S60】男女雇用機会均等法が成立。男性労働者と女性労働者の差別が法律で禁止される。
【H7】阪神・淡路大震災が発生。また同年、地下鉄サリン事件が起こる。
【H8】ポケットモンスターが大流行。ゲームやアニメなど、様々な展開を見せ、世界中に広まる。
【H14】サッカー日韓W杯が開催。日本代表は初のベスト16に。
【H20】リーマン・ショック。世界的な金融危機が発生し、日本も大不況に陥る。
【H23】東日本大震災が発生し、死者・行方不明者あわせて1万8000人以上。福島では原発事故も発生した。
【H28】熊本地震が発生。