ご当地スポーツ「地元チームの勇姿」〜土佐犬のごとく 勇ましく〜

高知球団の勇姿が 一冊の著書に…

 2016年、小学館より高知の球団を描いた一冊の著書が発行された。タイトルは「牛を飼う球団」。プロ野球独立リーグ「高知ファイティングドッグス」が数年に渡って歩んだ実話をもとに描かれている。それは、消滅寸前だった球団を救った奇跡の軌跡を追った物語。  2005年に四国アイランドリーグが発足。その一つとして産声をあげたのが、闘犬が愛称の「高知ファイティングドッグス」だった。しかし、他県に比べ「経済力」「人口数」、いずれも高知県は弱く厳しい環境下。球団の運営はスポンサー頼りでは立ち行かなかった。そこで球団が行ったこと、それは「高知に埋もれた魅力の発掘」。野球とは全く関連性のないキーワードをいかに絡め、野球に興味のない人達に興味を持ってもらうかが、人口の少ない高知県においては命題。過疎の進む地方の活性化、第1次産業への若者の参入、スポーツと観光のマッチング…、地方が直面している問題に真っ向から体当たりし、球団と連携させることで、地方球団のあり方を根本から覆していった。そんな汗にまみれた歩みが、著書にはリアルに綴られている。

NPBを目指して夢を追いかける「高知ファイティングドッグス」のメンバー。

 まず球団が着手したのは、越知町と佐川町との「ホームタウン協定」の締結。選手寮は隣接する佐川町に設けて選手全員を移住させた。少子高齢化や人口流出の流れが止まらない過疎の町を活気づけようと取り組む自治体と連携し、交流人口を増やすことに努めたのだ。初めて越知町で公式戦が開催された日の動員数は、越知町の人口の4分の1にのぼる約1500人。スタンドの脇には町の飲食店がずらりと並び、町はお祭りさながら。選手達の住む佐川町では、徐々に地域の人達が親代わりとなって選手達を叱咤激励する姿が見られるようになり、司牡丹酒造のお酒を飲みながら球場へ向かう応援バスツアーが組まれるまでに。そうして、「高知ファイティングドッグス」は地域にとけ込み、しっかりと根ざし、そして愛されていった。

ファイティングドッグスのマスコットキャラクタードッキーと触れ合う地域の子ども達。

農業、食品、観光… 地域の魅力と 野球がコラボ

 一方で球団は、高知県の魅力を取り入れようと農業に着手。普段ユニフォーム姿の若者がグラブを軍手にバットをカマに代え、田んぼや畑をせっせと耕した。ドッグス田では、子ども達と一緒に米作りを。ドッグス畑では、生姜、サツマイモ、タマネギなどの作物を栽培し、球団オリジナルの「ドッグスジンジャー」や「ドッグスカレー」を商品化するなど、地域の人達と共に汗を流しては、「野球」というキーワードを越え、応援団を少しずつ増やしていった。著書のタイトル通り、その取り組みの一つに、2年間に渡り球団で牛を飼ったこともある。また、地域活性化に野球で貢献しようと、土佐清水市のホテル「足摺テルメ」を事業に取り入れ「ベースボールツーリズム」を提唱。インバウンドを狙った取り組みは、旅行会社からも賛同を得ている。 

園児と一緒に本気で田植えを楽しむ球団の選手。みんなとても清々しい表情だ。

 「地方でスポーツチームを運営していくには地域にどう根ざすかが大きな課題。一番大切なのは応援してくれる観客をどう増やすか。それが選手のモチベーションにも、球団運営にも大きく影響してきます」と、当時、球団社長を務めた武政重和さんは語る。その言葉通り、西は四万十市から黒潮町、東は安芸市、室戸市まで遠征試合に出向き、本拠地となる高知市営球場では、ナイター試合に飲み放題プランを取り入れるなど、あの手この手で県民の興味を引きつけ、高知県内に少しずつファンを増やしてきた。

地域の人達の指導のもと、熱心に畑作業に打ち込む。こうして共に汗を流すことで地域に根付いてきた。

地元サッカークラブ 再生への一歩

 7年間、球団社長を務めた武政さんが、高知のサッカークラブの運営に加わったのは2015年のこと。当時、高知に2チームあったサッカーチーム「アイゴッソ高知」と「高知Uトラスター」を一つにまとめ、「高知ユナイテッド」を結成。「高知から本気でJリーグ」を合言葉に、エンブレムには高知らしく闘犬の化粧廻と黒潮をイメージし、中心に鳴子と鰹を描いた。球団で培った経験をベースに、今度は地元サッカークラブの発展を目指して新たなステージへと躍り出た。もちろん根底にあるのは、高知への地域貢献をベースとしたサポーター作り。1人でも多く地域の人と触れ合う機会を作ろうと、各地のお祭りやボランティア活動にも積極的に参加。保育所や学校訪問なども行い、交流人口を増やしている。  そんな中、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2019において、決勝ラウンドに進出し、高知県勢前人未到のJFLへの昇格を決めた。これまでの四国サッカーリーグでは年間14試合、それがJFLではホーム&アウェイで30試合が行われる予定。「対戦地域のサポーターが観戦しに来高する機会も増えるため、高知県の魅力を全国へ広めるチャンスとなります。他県のサポーターが高知の試合には毎年行きたいと思ってもらえるよう、まずは影響力のあるチームになりたい」と武政さんは意気込む。

昨年、JFLへの昇格を決め勢いづく「高知ユナイテッド」。サポーターも着実に増えている。