土佐打刃物のワザが光る

江戸時代から受け継がれてきた土佐打刃物。その確かな切れ味は海外でも高く評価され、プロの現場から家庭の台所まで、幅広く愛用されている。

    主な行き先
    ・アメリカ
    ・ヨーロッパ

    世界が認める切れ味 土佐打刃物の職人技


    江戸時代から続く「土佐打刃物」が世界の料理人から高く評価されている。(協)土佐刃物流通センターが海外と取引を始めたのは約20年前。日曜市で偶然土佐打刃物を見かけて魅了されたドイツ人が取引を申し出たのがきっかけだった。

    「土佐打刃物は、鉄と鋼を組み合わせて作るため、きちんと手入れしないとすぐに錆びます。販売する時は、包丁の研ぎ方も一緒に伝えているんですよ」と田村さん。

    「自由鍛造(たんぞう)」製法で全ての工程を一人の職人が行うため量産はできないが、そのぶん使い手に寄り添った製品ができる。ゆえに商社を通すような大口取引は難しいものの、個人間でのやり取りだからこそ保存方法など細やかな情報まで丁寧に伝えられるという。

    注文から納品まで半年以上、時には1年以上かかることもあるが、それでも注文は絶えないそうだ。

    こんなふうに使われている!

    ものを売るだけではなく、文化も一緒に伝える

    海外では家庭用に使われることが多いという土佐打刃物。写真は、カリフォルニア州にある日本の台所用品を販売するお店「Japanese Knife Imports」の様子。

    決まった型を使わず、職人が手作業で刃物の形や角度などを自由に変えていく製法「自由鍛造」で作られるのも土佐打刃物の特徴。

    全て磨き上げるのではなく、側面にあえて黒い部分を残した「黒打ち」と呼ばれるものが、海外では人気なのだとか。


    ルーツは「土佐打刃物」
    世界を耕す巧みな刃「太陽」の爪

    主な行き先
    ・インド
    ・インドネシア

    土佐伝統の爪が 異国の田畑を耕す

    トラクターで使用される「耕うん爪」の製造で国内シェア40%を誇る、高知市に本社を置くトップメーカー「太陽」。

    主力の耕うん爪は、土佐打刃物の技術と青龍刀(※)の形状をヒントに開発されたもので、耐久性や反転性、草の絡みにくさが強み。日本で歩行型の耕うん機が使われるようになった、昭和25年頃から国内農業を支えてきたロングセラーだ。

    そんな同社は、平成25年頃から世界最大のトラクター生産国・インドに着目し、現地に自社工場を設立。土壌やトラクターの性能、耕うんスピードなどを現地で確かめながら、インドの農業ニーズに合わせた50種類もの耕うん爪を開発し、現在、インド市場でのシェアは、なんと第2位を誇る。

    土佐打刃物に由来する圧倒的な耐久性を武器に、広大で作付け回数も多い異国の大地を耕している。

    (※)中国で古くから使われた、刃が幅広く湾曲した長い柄の大刀

    インドのサトウキビ畑で実施した新製品テストでは、栽培品種に合わせて爪の長さや形状を細かく調整していった。

    海外事業部の土居さんが開発した耕うん爪。独特のひねりと、「折れず曲がらず」の耐久性を持つ海外主力製品のひとつ。

    (協)土佐刃物流通センター(香美市)

    地元の力で受け継がれる、土佐打刃物の現場

    
    

    「土佐刃物流通センター」を訪れると、カーン!カーン!と刃物を打つ音が響いてくる。センター敷地内にある「鍛冶屋創生塾」では、塾生たちが土佐打刃物の基礎から高度な技術までを学びながら製作に励んでいる。

    彼らを指導するのは地元の職人たち。そして作業場で動くのは、創業80年以上の地元企業「坂本鉄工所」が手がけた鍛造機械だ。

    技を受け継ぐ人、道具をつくる人、その姿を支える土地。多くの「地元の力」が重なり合い、土佐打刃物の未来がここで育まれている。