夜中に響く畳を叩くような音 実はタヌキのしわざで 「畳叩き」と呼んで恐れられた
その昔、高知城下の中島町(現在の中島町公園付近)に小八木(こやぎ)という侍の屋敷があった。その屋敷は広く、庭には木々や池があったという。その庭にあった巨大な榎(えのき)の下に、いつの間にか棲みついていたのが、年老いたタヌキ。このタヌキは夜中になると畳を叩くような音を立て、これが「小八木の畳叩き」と言われ、たちまち有名になった。この音の不思議なところは、ごく近隣にいる人には聞こえず、逆に二、三町(ちょう※)離れた場所にいる人にはよく聞こえたということだ。
この頃、城下に住む人々は、子どもが泣き止まない時は「そら畳叩きが聞こゆるぞ」と言って脅かしたとされている。泣き止まない子どもはいなかったといわれるほど、効果は抜群だったようだ。
今宵、もし不思議な音が聞こえてきたら耳をすませてみてほしい。もしかしたらその音は、あなたが知ってるリズムが刻まれていたりして…。
参考文献:土佐風俗と伝説(寺石正路著)
※一町=約109m