ワカモノがゆく!土佐文化体験記「夏越しの祭り」

高知県内各地で脈々と継承されてきた地域の文化を、初めて若者たちが体験! 今回は、香美市香北町で親しまれる夏の風物詩を、地元の中学生がお手伝いしました。

実際にやってみると、お祭りの準備には人手が必要なことを実感。

新しい伝統が 柔軟に生まれる神社で お祭りの準備が進む

 この時季、全国各地の神社で開催される「夏越の祓(なごしのはらい)」は、高知県では「輪抜け様」とも呼ばれ、地域の住民たちに親しまれている初夏の年中行事。大川上美良布(おおかわかみびらふ)神社でも祭りの前日から設営が進められ、今回地元の香美市立香北中学校の生徒たちが初めて準備に参加した。  

中学生たちが作った「ペットわぬけ」。お祭り当日、愛犬家たちが楽しんだ。

大川上美良布神社は、広大な物部川(昔は大川と呼ばれていた)流域の総鎮守(そうちんじゅ※)で、「暴れ川」であった物部川を治めて豊作を祈願するため、平安時代から信仰されてきた由緒ある神社である。一方で、神社を守る地元住民たちの考え方はとても柔軟で、移住者のアイデアでペット用の輪を作ったり、お酒を楽しめる「おつまみ神社」というイベントを併催したりと、夏越しの祭りに新たな息吹をもたらしている。今年も新たな発案があり、祭りの輪を茅(ちがや)ではなく日本古来より伝わる植物「まこも」で作ることになった。

古来より「神が宿る草」と言われるまこも。地域で新たに栽培を始めた方が提供した。

胸に感じていたのは 地域の祭りに 貢献できた誇り

 「お祭りには毎年、友達と遊びに来ていた」と話すのは、中学3年生の小松さん。それでも、これまでくぐってきたはずの祭りの輪がどんな構造をしていて、誰が作っているのか、気にしたことは無かったそう。神社総代(※)の府川さんは、手取り足取り指導するよりも、「まず観察して、自分たちなりにやってみて」とアドバイス。

宮司の甲藤英明さん(右)と神社総代の府川一さん(左)

まこもを手に「ご利益あるかも!」と笑っていた生徒たちも、やがて「もっとかっこよく見えるように」と作業に没頭。出来上がった輪を前にすると、「ちょっと誇らしい」と汗をぬぐった。生徒たちが驚くほど上達したのは、輪をくくるためのしめ縄づくりだ。将来、大人になった彼らが編んだしめ縄が、神社の本殿にかかる日が来るかもしれない。