四国はもとより、ここ高知でも昔から続いてきたお遍路さんへの「お接待」。 エネルギー源となるあまいお菓子を振る舞ったり、労いの言葉をかけたり、 そこにあるのはお遍路さんの無事を願う人々の温かい気持ち。 今回はお遍路さんにまつわる甘味や人にスポットを当て、 甘味を通して見えてきた、おもてなしの文化をひもとく。
札所のお膝元でいただく
手作りの名物どら焼き
第25番札所「津照寺(しんしょうじ)」のお膝元に店を構える「遍路の駅 夫婦善哉(めおとぜんざい)」。多くのお遍路さんが食事や休憩に立ち寄るこの場所で、名物になっているのがどら焼き。今から16年前、店の業態が変わることを機に「何かお土産になるものを」と始めたもので、夫婦で回るお遍路さんが多いことから当時は「夫婦(めおと)どら」と名付け、小さく切った一口サイズをお接待で振舞っていたところ、これが徐々に評判を呼び、今では看板商品に。現在どら焼きを作っているのは三代目の谷口洋介さん。「まるでパンケーキみたい」と言われる皮は、卵を念入りに混ぜることでふわふわの食感に仕上がり、小豆から炊く餡は作り方を日によって微調整。また「お遍路さんのおやつにもちょうどいい」とサイズは直径8cmほどにし、今年に入ってからは焼印を津照寺の鐘撞堂のデザインにリニューアルした。本人は「特にこだわってない」と笑うが、丁寧な仕事によって作られるどら焼きは、常連のお遍路さんが購入したり、団体のお遍路さんが来た時には一気に購入されて品切れになったり、最近では外国のお遍路さんにも人気。次の札所へ向かう活力となっている。
谷口さん「ここにいるといろいろなお遍路さんとの出会いがあって、必ずどら焼きを買ってくれる常連のお遍路さんもいます。道中の活力になったり、思い出に残るものになれば嬉しいですね。」
店のすぐ横から参道へ繋がる。奥には津照寺の納経所や本堂に続く階段と、焼印のデザインの元になった鐘撞堂が見える。
「揚げどら」も人気。参拝前に注文しておくと、戻ってきた頃には揚げたてが食べられる。餡は小倉と北川村産ゆずの2種。