高知に輝く育種のあしあと

花き園芸の現場では、時代のニーズに合わせた新たな品種改良、すなわち「育種」が積極的に行われている。今や花き園芸の最前線とも言われる高知県だが、その発展の背景には、地域の気候にあった品種やブランド性の高いオリジナル品種など、生産性と商品価値を意識した長い育種の道のりがあった。

高知県の農業技術センターが育種を始めたのは、今からおよそ30年前。もともと山野草として愛でられていたヒメユリを、切り花用の品種として改良し、「スタービューティー」として商品化したことが始まり。だが、民間の生産者による育種の歴史はそれ以前から行われていた。

より高品質な品種を作るため、選抜した種や球根を親株として、さらに交配や選抜を重ねていく育種の取り組みは、長いものでは10年以上の歳月を要することもある。それだけに育種家が蓄積した経験と知識、品目を目利きするセンスが成功を大きく左右する。

例えば、生産者の長きにわたる研究と努力によって生まれた三里地区の「サザンウィンド」や、芸西村のオキシペタラム「ピュアブルー」などは、その成功した典型例だろう。育種によって新たに誕生した花の一部は、農業技術センターで試験栽培が行われる。

そこで、気候の適応性や確実性の高い栽培方法が検討され、生産者に情報が提供されることで、経験の少ない新規就農者でも生産できるようになる仕組みができている。積み重ねられた育種の足跡は共有され、次世代の生産者が継いでゆくのだ。