仁淀川の恩惠を受ける人々 暮らしの中の食〜片岡裕貴さん〜

恵まれた豊富な水を 生き物と捉え
アマゴ養殖を営む

仁淀川の上流域である中津渓谷では、仁淀川を代表する美味な川魚であるアマゴの養殖が行われている。取り組むのは、昭和45年から続く「片岡養魚場」の代表・片岡さんだ。「何よりも必要なのは、美しく澄んだ水だね。『四国トップクラスの環境』と言われたこともある」。

 

そんな片岡さんの言葉通り、降り注いだ雨水は、水源である中津明神山に深く染み込み、1年を通じて、水量・水温ともに安定した水を与えてくれている。そのため養殖場には、常に新鮮な水が流れ続け、アマゴが健やかに育つ。

一方で、流れ込む水を「生き物」として捉え、注視することも欠かせない。水と直結した環境だからこそ、大雨で土砂崩れが起これば、水流が途絶えるのも早い。そうなれば養殖場にいる数万匹のアマゴは1時間程で息絶えてしまう。豊富な水の恵みを受けながらも常に気を抜かずに水を見つめる片岡さんの後ろ姿は、仁淀川の暮らしを垣間見せてくれる。


まだまだあるで!
仁淀川が育むおいしいもん

アユ

春先に土佐湾から遡上するアユは、秋ごろまで仁淀川の本流・支流で見ることができる。水中にナワバリを作る習性があり、おとりのアユを泳がせて釣り上げる「友釣り」が盛ん。

アマゴ

仁淀川の上流域である上八川川をはじめ、安居川や中津川といった渓流に生息するアマゴは、地元ではアメゴとも呼ばれる。小ぶりで美しい斑点が特徴。川原で串焼きにして味わうことも。

ウナギ

昭和の中ごろは、筒型の漁具を一晩仁淀川に沈めておけば、それだけで大量に捕れていたという天然のウナギ。蒲焼きはもちろん、豆腐と一緒に煮込む料理も地元住民の大好物だった。

川エビ

高知県の川エビ漁は4月から8月の期間のみ許されており、シーズンがくれば夏休みの子どもたちが喜んで捕る。唐揚げにして、一日中川遊びをした子どもたちのご馳走として出されていた。

ゴリ

よく川原近くの浅瀬に潜んでいるゴリは、実は小さなハゼ類の総称。音を立てて網に追い込む「ガラ曳漁」という漁で大量に取れていたという。唐揚げや佃煮で食されていた。

写真提供:ゴリ(ヌマチチブ)/高橋弘明 川エビ、ウナギ、アマゴ、アユ/株式会社西日本科学技術研究所
取材協力:仁淀川漁業協同組合