紡がれる90年の歴史 代々受け継がれてゆく「ひな祭り」

約90年、五代にわたって受け継がれる数々の人形。時代とともに人形の顔や着物のデザインも変わり、時の流れを肌で感じることができる。次の世代にバトンを渡す、孫たちに寄せる思いとは。

受け継がれてきた
人形と願いを次の世代へ

 香美市香北町蕨野にある西野家では、毎年2月に入るといろんなひな人形を奥の座敷に飾るのが恒例行事。案内してくれたのは「株式会社わらびの」の代表で、ここ西野家の長女として生まれ育った畠中智子さん。古い物では、智子さんの祖母に当たる正子さんが嫁節句の時に贈られた高砂人形から、智子さんの市松人形、お嬢さんと姪、それぞれの七段飾り、孫の三段飾りと立ちびな飾り、他にも趣味で集めたといういろんな人形が所狭しと並び、その光景はまさに壮観。人形の顔の形や着物のデザインもさまざまで、ひな人形を通して時代の移ろいを肌で感じることができる。「元々、それぞれの家に飾っていましたが手狭になり、それだったら本家にみんなのを飾って一度に見られるようにしたらということで、20年以上前からこのスタイルになりました」。今年は旧正月に合わせた2月に親戚の集まりがあり、座敷でひな人形を見ながら思い出話にも花が咲いたとか。また、女の子の孫たちは小学生と年長さんになり、説明書を片手に飾り付けを手伝ったのだそう。「自分たちのお人形もあるということをだんだん理解してきたようです。大人になるまでこの記憶が残り、毎年ひな人形を飾る習慣を後世にもつないでほしい」と大人たちは願っている。