土佐の名建築【酒造】〜歴史ある土佐の 酒造を代表し 登録有形文化財に〜

酒造りと共に 100年以上の歴史を刻む酒蔵

 高知県内各地に点在する土佐酒の蔵元は、現在18蔵。それぞれが長年に渡って独自の日本酒造りに励んできた。歴史が育んだ日本酒はもちろんだが、その酒を造り出す酒蔵の佇まいもまた、時を刻んだ味わい深さがあり、町の景観に趣を重ねる。中でも、中土佐町の「西岡酒造店」、香美市の「松尾酒造」、田野町の「濵川商店」は創業100年以上を誇る。今では松尾酒造と濵川商店は国の登録有形文化財となっており、修繕を施されながらも現役として今も数多くの銘酒を生み出している。

 西岡酒造店に至っては江戸時代中期の1781年(天明元年)創業から約240年。途方も無いほどの時間が流れる中でもその姿を保ち続け、江戸時代当時の町屋を思わせるような外観と共に、木や竹、土などで作られた壁や天井など、歴史的建造物たる風景を数多く残す。

 一方で、共に明治時代に創業された松尾酒造と濵川商店の蔵は、壁に漆喰が施された土蔵造が特徴で、松尾酒造は敷地を囲む印象的な外壁や蔵の隣にある昭和時代に建てられた事務所なども良い味を出している。濵川商店は酒蔵の景観を活かすように造られた社屋や倉庫などが並んでおり、レトロさとモダンさがうまく共存したコントラストが印象的。各蔵では自慢の日本酒の販売や試飲、さらに蔵の見学(濵川商店は不可)などの実施も行なっているので、それぞれの景観と共に、お酒の味を比べる小旅行に出てみるのも愉しい。


松尾酒造

黄色いラインの外壁が印象的な「松尾酒造」は、明治6年創業。東に面した小道を北に入ると、登録有形文化財の認定を受ける、漆喰塗壁の蔵と煉瓦造りの外堀が織りなす紅白のコントラストや、重厚な表構えをなす母屋がお目見え。事前予約にて、蔵や貴重な物品を展示した資料室などを見学することもできる。※時期により対応不可


濵川商店

「美丈夫」で知られる、明治37年創業の「濵川商店」。2015年に登録有形文化財となった蔵は、土蔵造ならではの漆喰や数多くの窓、さらに土佐の蔵の特色である多段に廻らせた水切瓦など、当時の面影が色濃く残った姿を拝むことができる。蔵のすぐそばに今年建築された社屋などとの新旧コントラストも楽しい。


西岡酒造店

創業約240年、現存する酒蔵では県内最古となる。蔵は見学することができ(10〜3月以外)、そこかしこに残る当時の風景が歴史の重みを感じさせてくれる。天井に設置された滑車は今もなお現役。併設のギャラリーでは、実際に使用していた道具や昔ながらの備品、現存する帳場などを展示している。