令和高知の妖怪大図鑑バケぺディア「ヒダル神」

お腹が空き過ぎて 体調が悪い…          それはヒダル神の仕業かも

 山道や峠などで急に激しい空腹に襲われ、冷や汗が出て動けなくなる。このような時、土佐では「ヒダル神に憑かれた」といわれてきた。

  「ヒダル神」は、人間に空腹感をもたらす憑き物で、飢えや疲労によって死んでしまい、祀られることのなかった者の魂や、怨霊のようなものだと考えられている。高知県ではヒダリガミ(旧十和村ほか)、ヒダル(旧吾川郡ほか)、クワン(旧土佐山村)、ガキ(旧十川村ほか)など各地でいろいろな呼び名があった。ヒダル神に憑かれると何でも一口食べるとよいとされ、常日頃から弁当は食べつくさずにヒダル神に憑かれた時のために二、三粒残しておいて、憑かれた時に口に入れたらよいといわれていた。また地域によっては、米という字を手のひらに書いて食べる、身につけている物を後方に向けて投げるという説もあった。 

 山道を歩く時や遠出をする時は、食べ物の備えを十分にしておこう。

協力:高知県立歴史民俗資料館