ワカモノがゆく!土佐文化体験記vol.6
高知県内各地で脈々と継承されてきた地域の文化を、ワカモノたちが体験! 今回は、土佐市の「戸田商行」で、地元の高校生が木毛作りに触れた。

贈り物に温もりを添える 高知の木毛(もくめん)
土佐市の「戸田商行」では、年輪幅が広く柔らかな県産木材の特性を生かし、県内各地から集めた多様な木を原料に木毛を製造し、国内外へ届けている。元々、山を歩き木を売買する「山仕(やまし)」の仕事に携わっていた創業者が、木毛の製造に進出したのは昭和36年のこと。早くから木毛という素材の将来性に着目し、山の木をただ売るのではなく、削って緩衝材へと生まれ変わらせる付加価値の高いものづくりに挑んだのだ。創業当時から使い続けられている6台の木毛製造機は今も現役で、職人が手間を惜しまず丁寧に仕上げている。戸田さんが「木毛には、受け取る人を思いやる、日本人らしい美しさがある」と語るように、贈り物に木の温もりを添える緩衝材として親しまれている。
資源を余すことなく生かす 循環型のものづくり
木毛の〟くるくる〝とした柔らかなカールは、木の目に対して斜めに刃を入れるという繊細な職人技から生まれる。戸田商行では、乾燥作業に端材を燃料として使うなど、素材を無駄にしない工夫も徹底している。また、県産木材は香気成分が多く含まれていることから、山に廃棄されている枝葉を集め、杉や檜(ひのき)のオイルを抽出している。見学した生徒からは「木材が燃料になったり製品になったりしていてすごい」との声もあった。
森林率84%の高知でも、木に触れる機会は意外と少ない。今回見学した高岡高等学校の生徒たちも、松・杉・檜・楠(くすのき)の木毛に触れ、「木毛は知っていたけど、木の種類でこんなに違うとは思わなかった」と驚いていた。
戸田さんは「自然の良さを伝え、高知の木材文化を未来につなげたい」と語る。木毛は、その思いに触れられる入口となっている。




木毛(もくめん)

「もくめん」は、木材を細く削り乾燥させて作られる、天然素材の緩衝材。デリケートな青果や贈答品を守るために用いられてきた。起源は、明治天皇に献上する果物を包むため岡山の大工が考案したとされ、昭和40年代には全国で生産が広がった。その後、安価な代替品の普及などで製造業者は減っていき、「戸田商行」は現在、「日本最後の木毛工場」といわれている。
問い合わせ先/088-855-0426 (有限会社戸田商行)





