多ジャンルとコラボし文学も多様化 他メディアを入り口に文学の世界へ
文学作品の映画化、テレビドラマ化などが相次ぐ昨今、他メディアを入り口に文学作品へと原点回帰。活字離れが進んでいると言われる文学シーンに新たな流れが生まれている。映画化されて高知が一躍脚光を浴びた有川ひろの「県庁おもてなし課」は記憶に新しい。
郷土愛溢れる 話題作続々
〜活字の世界へ再び原点回帰〜
新聞・雑誌・小説が一世を風靡した文学の最盛期は過ぎ、活字を追うという習慣が薄れる中、文学はテレビ、映画、舞台、漫画、サブカルチャーなどと連携し多様化。平成の時代は、従来の枠を超えて新しい世界を創造しようとする作家の活躍が目立った。高知出身の現代作家も十人十色独自のスタイルで躍進。映像化されている大衆向けの作品も多く見られる。中でも代表的な作家の一人、有川ひろの作品は「県庁おもてなし課」「図書館戦争」「阪急電車」「旅猫レポート」などたくさんの作品が映画化。映画をきっかけに原作を手に取る人達も多く、別媒体を入り口に、活字の世界へと原点回帰するという新たな流れが業界内に生まれている。 また、「高知出身の作家は高知を題材とした作品を手掛けることも多く、とても郷土愛を感じるんですよ」と学芸課長の津田さんは言う。その言葉通り、高知県庁を舞台とした有川ひろの「県庁おもてなし課」、ジョン万次郎の生涯を描いた山本一力の作品「ジョン・マン」、藤原緋沙子が坂本龍馬の恋人を主人公に描いた「龍の袖」など、作品を通して高知の事や歴史を伝えている作品は数えきれない。 「活字は映像化されたものと違って、読み手自らに想像させるという力があるんですね。ゆえに、創造力を育むんです。入り口は、映画やテレビでも良いから、最終的には活字にたどり着いてもらいたい。そのためにも、文学の面白さを多角的に伝えていくのが文学館の使命だと思っています」。津田さんは「高知県立文学館」設立から22年、学芸員として高知ゆかりの文学の魅力を伝えてきている。そんな津田さんお薦めの一冊を最後にこっそりと教えてくれた。 「自分が生かされているんだという認識のもとに、どういう状況下におかれても、自分が自分なりに生涯を全うする、一生懸命に生きている姿を描いた作品が好きなんです。有川さんの旅猫リポートは好きな作品の一冊なんですよね。心優しき青年とツンデレな猫が旅をする物語なんですが、与えられた命を大切に生きる主人公の姿は、私達に生きる力を与えてくれます。若い方にぜひ読んで頂きたいですね」。