つないでつむいで 県史編さん室

高知県史(自治体史)とは?

高知県について伝え残されたさまざまな資料を調査し、本県の歴史を詳細に記したもの。郷土の歴史を知る、大切な手がかりだ。


国重要文化財「高知城天守・本丸御殿」

県無形民俗文化財「土佐の花取踊(太刀踊)蓮池太刀踊(撮影者:島本 慶子氏)

国天然記念物「平石の乳イチョウ」

受け継がれる文化の記録 高知県文化財の 調査がスタート

高知の文化財といえば、何が思い浮かぶだろうか。 現在、県内には国や県が指定している文化財が63件ある。その種類はお城や寺社仏閣のような建物から、巨木や希少動物などの天然記念物、地域の伝統芸能といった無形民俗文化財など、多岐にわたる。

これらの文化財に焦点を当て、高知県史文化財編を刊行するため、令和7年4月に新しく文化財部会が発足した。主に高知県内の国、県指定文化財の保存や保全の状況、現状について調査していく方針である。

また、今後の保存や活用につなげられるよう、文化財の指定を受けるに至った経緯や理由なども調査していく予定だ。

高知県の文化を後世へ 県民と歩む保存の道

部会をまとめる岡本桂典部会長(高知県文化財保護審議会)と三浦要一副部会長(高知県立大学)に、これからの文化財部会の活動方針や意気込みを伺った。  

「高知県の文化財の現状を把握し、今後の保存や活用につなげるためには、文化財編の編さんに向けた調査活動は非常に重要です。特に指定年が古い文化財ですと、指定経緯や理由が分からなくなっているものもあるので、これを機にしっかりと調査する必要があります。そして、高知県の文化財の歴史や成り立ちを、多くの県民の方々に知っていただきたいですね。」と二人は語ってくれた。  

文化財部会では令和7年度から、県内全市町村を巡り文化財とそれに関する資料の調査を始めている。保存に携わる地域の方々にも協力してもらいながら、文化財にまつわる資料を一つ一つ集めていく。

第13回 高知県史民族部会
史料が語るもの語

昭和56、57年度の「高知県民俗文化財分布調査」では、県内各地の明治生まれの古老たちが経験した民俗の記録が収集された。調査成果は『高知県民俗地図』としてまとめられ、かつての県内における民俗の分布を知ることができる。

当時記録された調査表が、高知県歴史民俗資料館に保管されている。

当時の衣食住、生業、信仰などについて、 調査員が書き留めた記録が残されている。

新たな高知県史と「民俗地図」

高知県史民俗部会では、今後県内全域でアンケート調査を実施し、「民俗地図」を作成することを計画している。  

「民俗地図」とは、ある種類の民俗事象の分布を地図上にプロットしたもの。『高知県民俗地図』の中から一例を挙げると、「餅つきに使う臼を何と呼ぶか?」という質問について県内の分布を示した図が作られている。図を見ると、県全域で「ツキウス」やそれに近い呼び方が見られる中で、高岡郡から吾川郡にかけての一部地域には「タチウス」という呼称が特徴的に分布していたことなどが分かる。

ただし、有効な民俗地図を作るにはデータの採集時期や調査方法を揃えることが必要だ。その点で、全県的な調査を一斉に行える高知県史編さん事業は「高知県民俗文化財分布調査」以来の民俗地図を作るチャンスと言える。この調査表は、新たな高知県の民俗地図を描くにあたっても大切なヒントを示しているのだ。