Posted on 2014.03.24

家業を継いだあの人 せがれ No.6

現代企業社 大西光輝さん一人ひとりが輝く店に

いらっしゃいませ。
落ち着いた声で迎えるレストランのウエイターは、実は社長。
現場主義を貫き、数々の店を経営している。


個性あふれる店構え

 レストラン12か月、穀物学校、あじさい街道……。県内に17の店を展開する現代企業社。喫茶店、レストラン、雑貨店と業態は様々、店名もメニューも17通り。チェーン店にはない独特の世界を作り出している。  
 大西光輝さん(40)は、祖父、父に継ぐ現代企業社の三代目。祖父は、56年前、喫茶店を始めるため夫婦で高知市に出てきた。喫茶「ショパン」。おびさんロードの「ファウスト」の前身だ。その後、大橋通の「メフィスト・フェレス」、日高村の「レストラン高知」と、店を展開してきた。  
 光輝さんは、子どもの頃、祖母と日曜市に行って、ファウストでモーニングを食べるのが休日の定番だった。「祖父はコーヒーを淹れたこともなければ、いらっしゃいませと言ったこともない。父は28歳で社長になり会社を背負ってきたので祖母がよく面倒を見てくれていました」。祖父が県外で流行っているモーニングを高知で出し始めたことなど、祖母からよく聞かされた。

修業を重ねて


 光輝さんは日高村で生まれ育った。「学年1クラスしかない田舎で、山で遊んだり、探検したり」。小学校高学年からはじめたサッカーにのめり込んだ。ポジションは常にオフェンス。「試合のシチュエーションに合わせて、相手の意表をつくプレーが得意。サッカーの時はかまんけど、人をおちょくるようなことはいかんと、いまだに父に注意されます」。  
 高校を卒業し、東京の大学に進学した。ちょうどその頃、Jリーグが開幕し、サッカーブームが到来。スタジアムに通って観戦した。「父に継げと言われたことは一度もないし、継ぐつもりも全くなかった」。サッカーショップを開く目標を持ち、卒業後、新宿のスポーツショップでアルバイトをしたが、経営は厳しそうだった。  
 ぼんやりと高知に帰ることが浮かんだ。「せっかく東京にいるんだから、レストランの勉強をしてみよう」。全国チェーンのレストランで1年間働いて、接客のスキルを磨き、現代企業社に入社した。  
 最初の仕事は、愛媛県に出店していたレストランのリニューアル。約3か月間、高知から毎日通い、ホールを務めた。その後は、「この仕事をやるなら、厨房も分かっていないと」、とレストラン風見鶏でコックを務めたり、新店の店長を任されたり、現場で経験を積んだ。時間ができると父と店を回り、雰囲気、接客、味などをみながら経営を学んだ。  
 2010年、還暦を迎えた父から社長のバトンを渡された。

突然のピンチ


 2012年、地元百貨店が飲食店街を閉めて書店に変更すると発表した。そこには10年以上続くガーデン食堂と、半年前に始めたチャイニーズレストランを出店していた。「どちらも売り上げは順調。2店の従業員の働き場がなくなるのは困る。まさか辞めてくださいなんて言えない」。すぐに物件を探し、1店は近くの商店街に移った。もう1店は知人から使い道の相談をされていた古民家を改装して再スタートした。「決して順調じゃないです。ピンチをチャンスに変えるっていうと大袈裟だけど、気持ちを切り替えていきました」。  
 光輝さんの1日は店に出ることからはじまる。急にスタッフが休んだ店があればホールに出て手伝い、時間があれば客としてコーヒーを飲むこともある。会長である父と、副社長の弟。3人で役員会議をしながら会社の方向を決めていく。「父は閃くタイプで新しい店はああしたい、こうしたいとイメージがある。僕はホールや厨房を思い浮かべて、これやったらできるかもと形にしていく。弟は、事務所の仕事をしたり、まちづくりの活動をしたりしているので、広い視野から意見を出す。デザインを担当する妹が話に加わることもあります。父と弟は言いたいことがあってケンカ腰になることもあるけど、僕は温厚なほうなんで」。

絵心を胸に

 ガラス越しに180度、高知の町並みが一望できる五台山展望台に併設されたカフェ・パノラマ。古い食堂を改装し、広々としたカフェにした。  
 店内に大きな曲線のオブジェがある。「これは祖父が作ったもの」。光輝さんの祖父は、最初に店を出した時から店の窓に絵を描き、独自の雰囲気を作ってきた。祖父や父から「絵を描け、芸術的な力を身に付つけろ」、と言われ続けてきた。喫茶店は芸術家が集まる場なんだから、店主も芸術感覚を持たなくてはいけないという教えだった。  
 趣味はサッカー一色だったが、8年前、試合中に怪我をして自宅療養の身になった時、筆を握った。「最初に描いたものを見せると、いいじゃない、と。それ以来、絵を描いています」。バランスをみて、何が足りないのかを考える。絵を描くことは、店づくりに通じる。
「子どもが生まれてから絵本を集めはじめたんです。それを展示して、サイフォンで淹れたコーヒーを飲みながら、絵本が気に入ったら買ってもらえるような形にしたら面白いんじゃないか……」。カフェの1階は、自身のアイデアでギャラリーから絵本カフェにリニューアルした。


図書館のような雰囲気の絵本カフェ。フランスから買い付けた珍しい絵本がずらりと並ぶ。


オリジナルな店

 現代企業社のスタッフは200人以上。女性の制服は、何歳の人が着ても似合うよう、レストラン高知で働いていた元スタッフが縫い、店先のガーデニングは20年以上勤める女性が担当している。新しく入ったアルバイトの人が音楽のセンスがよければ、店の音楽を任せる。「特徴は、一つひとつ違う店づくり。オリジナリティを深めていきたいですね」。  
 店に出るからこそ、スタッフの強みがよくわかる。「現代企業社のお客さんは40〜50代の女性が多い。これからは若い人も集まるおしゃれなお店もやってみたい」。まるでキャンバスに絵の具を置いていくように。地道に一人ひとりが活きる場をつくっている。


五代山展望台のパノラマ。光輝さんの祖父、父、自身のアート作品が置かれている。

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