Posted on 2018.03.24

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地域の名のつく種

ずっと昔から種を採り、植え、収穫し、門外不出で守り継いできた作物がある。
その土地にあった特徴や個性を持ち合わせた種は、地域の自慢!

 


田村かぶ

 

 


田村かぶ​ たむらかぶ
【産地】
仁淀川町田村地区 
【収穫時期】11月〜2月
【特徴】扁平型で表面は赤紫色。中は白く、肉質は柔らか。


 

 


地域内外の“蕪主(かぶぬし)”が食べて支える
 深いブルーの仁淀川を見おろす斜面に茶畑が並ぶ旧吾川村田村。かつては焼畑で、土地を耕し、赤くて大きい田村かぶが作られてきた。藤崎和子さん(84)は「平べったくて、だいたい丸い、バラ色のかぶ」と笑う。毎年9月頃、牛ふんや鶏ふんを混ぜて土を作り、日に当たりやすいように「※あごを切って植えたら、※ひっとりできる」。日に当たるだけ赤くなるため、こまめに根元の葉を取り、かぶの首元に日が当たるようにしてやる。霜が降りたら葉も赤く染まって、さらにおいしくなるという。
 大きいものは2kgにもなるため、かつてはお正月に欠かせない縁起物だった。鯨の肉に、かぶの葉も実も入れてすき焼きに。煮込むととろりと柔らかく、うまみも出てくる。「田舎のコンビニおしおか」で販売する他、田村かぶを残していこうと2014年、「田村蕪式会社プロジェクト」が始まり、地域内外の“蕪主”が応援している。

【ミニ土佐弁講座】※あご:畝(うね)  ※ひっとり:自然に

 


【レシピ】田村っこが愛するバラ色の酢かぶ
1.砂糖、酢、塩、だし、薄口醤油(しょうゆ)で合わせ酢を作る。
2.田村かぶを食べやすい大きさにスライスし、塩でもむ。
3.しんなりしたら水でさっと洗い、水気を絞り、1を加えて和える。
4.器に盛り、刻んだゆずの皮を添える。

 


 


大豊在来きゅうり​ おおとよざいらいきゅうり
【産地】
大豊町 
【収穫時期】6月〜8月
【特徴】ずんぐりむっくりしていて、白いイボがある。


 

 


暑い夏のBIGな水分補給
 急峻な四国山地に位置する大豊町。碁石茶(ごいしちゃ)や銀不老豆(ぎんぶろうまめ)など、固有の食文化が今も残る。標高が高い割に夏は高温になるため、暑い日は畑のきゅうりを採ってきて、塩を振ってがぶり。果肉はしっかりしていて、さわやかなきゅうりの風味が鼻孔をくすぐる。細長く緑色のものとは違って白っぽく、直径は軽く10cmを超える。家々で種を採り、作り継いできた。
 長年トマトを栽培する岡崎秀仁さん(58)は、4年前にTeam Makinoから5種類の在来きゅうりの種を預り、大豊町で栽培する。「土地に合っているのか、大豊在来は樹の勢いがすごくいい」。しかし、暖かくなるまで花芽がつかず、何度も摘心して伸ばしても収量は少ない。肥料をやると樹勢が旺盛になって花芽がつかず、病気に弱く、虫もつきやすい。子どもを育てるように、手塩にかけて世話をする。「味は格段においしい。生で食べてもいいし、火を通しても煮崩れしにくい」。たくさん採れた時は、大橋通の「竹七屋」に並ぶ。

 


【レシピ】夏の定番! 大豊きゅうりの酢のもの
1.大豊在来きゅうりの皮を剥き、果肉をピーラーで長く削る。(種の部分は除く)
2.削ったきゅうりに塩を振って少しおき、軽く絞る。
3.刻んだみょうがや大葉を加えて、二杯酢で和える。

 


 

 


中追大根​ なかおいだいこん
【産地】
いの町中追地区 
【収穫時期】11月〜3月
【特徴】大きく育ち、首元が赤紫色に染まる。皮が厚く、中は水分を多く含む。


 

 


天上の畑にうまい大根あり!
 仁淀川沿いの国道からガードレールのない林道を15分ほど走ると、標高約450mのいの町中追の大平集落に辿りつく。四国山地が見渡せる日当たりのいい畑に、大きく赤い中追大根が植わっている。中岡和子さん(84)は、先祖の代から家々で食べる分を作っていた中追大根を今も作っている。「他の大根よりおいしいし、とうがたって、花が咲いても、すが入ることはめったにない。煮いても沸かしてもぐだぐだにならんで、味が※しゅんでおいしいわねぇ」。
 毎年3月から4月にかけて種を採り、「早う蒔いただけ太る」ので7月頃には畑を耕し、種を蒔く。日に当たれば首元が赤くなり、寒暖の差が大根をおいしくさせる。「大きいがは直径20cmほどにも太る。皮の下に味があるき、皮は剥かんがえいよ」。たくさん採れた年は、「道の駅くらうど」の直販所に持って行く。

【ミニ土佐弁講座】※しゅむ:染み込む

 


【レシピ】和子さん流 中追大根の煮もの
1.中追大根を皮つきのまま1cmくらいの輪切りにし、さらに食べやすい大きさに切る。
2.水をはった鍋に1を入れ、だし昆布、細切りしたトウガラシ少々、日本酒少々を入れて煮る。
3.箸がすっと通ったら鍋を火からあげ蓋(ふた)をして冷ます。
4.食べる前にもう一度沸かす。昆布の味がしみて、大根そのものの味を楽しめる。

 


 

 


潮江菜​ うしおえな
【産地】
高知市潮江地区 
【収穫時期】11月〜3月
【特徴】京菜、水菜の原種とされ、水菜と比べて葉の切れ込みが少なく葉柄が太い。


 

 


潮江の誇りを食卓に
 高知市を流れる鏡川の南岸の潮江は江戸時代に新田開発され、水田地帯となった。潮江地区でほうれんそうや春菊など葉物野菜をハウス栽培する熊澤秀治さん(60)は、22歳の時、宮尾登美子さんのエッセー「土佐のぞう煮」の項に「うしおえかぶを使う」とあるのを偶然目にした。「潮江の名のつく野菜があったのか!」。板垣退助も愛し、牧野富太郎の手紙からは※「潮江蕪は方言」ということも判明。しかし、戦後栽培されなくなった潮江菜の行方はわからない。
 衝撃から35年、熊澤さんの思いが届く。牧野博士に師事した竹田功さんが残した種がある日突然届き、半世紀の時を越えて復活を遂げた。「潮江菜はいくら煮いてもしゃきしゃきっとして、だしは強烈にうまい」。毎年9月半ばに種を蒔き始め、11月から3月まで出荷している。大橋通の「竹七屋」や高知市内のスーパーマーケットなどで販売している。

※高知では潮江蕪と呼ばれていた 

 


【レシピ】熊澤さんオススメ ハリハリ鍋
1. 鍋にカツオ節と昆布でだしをとり、醤油で味付けをする。
2.鯨のウネスとねぎ、豆腐を鍋に入れて沸騰させる。
3.潮江菜を山盛り入れて、火が通ったらできあがり。
4.食べた後は麺を入れたり、雑炊にしたりして、だしを味わってみて!

 


 

 


日南のぼたなす​ ひなたのぼたなす
【産地】
室戸市吉良川町日南地区 
【収穫時期】7月〜10月
【特徴】黒光りする紫色で、大きく丸い。水分が多く、加熱すると優しい甘みが出る。


 

 


山川百利枝さん(後列左から2人目)と 日南地区のみなさん

マグロに勝る、畑のトロ
 お舟や花台など華やかな秋の神祭で知られる室戸市吉良川町。東の川沿いをひたすら奥へ15分ほど車で走ると、山々に囲まれ谷川の流れる日南集落が現れる。70人ほどが暮らすこの集落に、赤ちゃんの顔ほどに大きく丸い「ぼたなす」が自家栽培されている。山川百利枝(ゆりえ)さん(70)は、「この辺のお年寄りが小さい頃から作っちょったと聞くき、いつからあるやらわからんねえ」。ぼたなす以外のなすが交配しないよう、地区全体で守ってきた。
 毎年3月頃に種を発芽させ、夏に収穫する。台風銀座の異名を持つ室戸での露地栽培ゆえ、飛んでしまわないよう頑丈な支柱と防風ネットは欠かせない。さらに、実がつく時期に雨が続くと実がぼたぼた落ちてしまうので、「肥を切らさんよう、乾燥せんよう、水やりも気をつけて」、うまくやれば10月くらいまで収穫できる。「炭火で皮ごと焼いた焼きなすは絶品。柔らかくジューシーで、一度食べたら忘れられん」。町内の「キラメッセ室戸」や「Aコープ」で販売している。

 


【レシピ】日南住民太鼓判! ぼたなすの焼きなす
1.七輪などに炭火をおこす。(吉良川特産の備長炭がオススメ)
2.ぼたなすを皮ごと網で焼く。
3.箸で刺してじゅわっと柔らかくなったら食べごろ。
4.皮を剥いて、ゆず酢たっぷりのポン酢で召し上がれ!

 


 

 


下知ねぎ​ しもぢねぎ
【産地】
高知市下知地区など 
【収穫時期】12月〜3月
【特徴】一般的な青ネギに比べて背が高く、葉が柔らかく、とろみが多い。


 

 


殿様も愛した?幻のねぎ
 古くから高知市の菜園場(さえんば)以東は田畑が広がり、お城下への野菜の供給地だった。高知市の歴史を記した書物によると、「下知の葱」は潮江菜と並ぶ有名作物。稲を刈った後に田んぼを耕し植えられる冬ねぎは、春のお彼岸の頃に花を付けるため、「畑にも(ねぎ)坊主が座っちゅう」と言われるほど馴染みのある風景だった。京都の九条ねぎ系という噂も立つほど評判が高かったものの、背が高く葉は柔らかく、とろみも豊富なため、流通の過程でふるいにかけられ、徐々に姿を消した。
 高知市潮江地区でねぎや葉物野菜を栽培する白岩哲(しらいわさとし)さん(47)は、2年前に農家仲間から「植えてみんかえ」と勧められ、下知ねぎの株を分けてもらった。水を好むため、水分を切らさないよう追肥もしっかりして株を増やしている。「とろみが※うんとあって、熱を入れると甘くなる」。幼い子どもにも人気で、食べ出すと箸が止まらない。幻のねぎが今後イベントなどでお目見えする日も遠くはない。

【ミニ土佐弁講座】※うんと:とってもたくさん

 


【レシピ】白岩さんの母の味 下知ねぎの酢あえ
1.下知ねぎを2〜3cmくらいに切って、少し塩を加えてさっとゆがく。
2.ねぎと同じくらいの長さに切ったイカを、少し塩を加えてさっとゆがく。
3.白味噌、米酢、砂糖を同量ずつ混ぜる。(砂糖は少し多めがオススメ)
4.1と2と3に、すりゴマを加えて和える。

 


 

 


大道の昔高菜​ おおどうの むかしたかな
【産地】
四万十町大道地区 
【収穫時期】11月〜3月
【特徴】茎に丸みがあって幅が狭く、葉は長く縦に伸びる。


 

 


左から、武内榮さん、川上久恵さん、竹内稲穂さん

平家が隠した?昔の種
 四万十町十和(とおわ)からさらに北の山へ、約30軒の奥大道集落は戦国時代から良質の木材の産地として知られ、日本最古の※複層林が今も残る。冬は雪に閉ざされるため自給自足の暮らしが基本で、野菜を育て、豆腐も味噌も自家製、猟師が獲った肉がごちそうだった。
 生まれも育ちも大道の武内榮さん(80)は、代々種を採った「昔高菜」をはじめ昔大根や昔かぶ、赤きびを今も作る。昔高菜は10月頃に種を蒔き、冬に定植、春には収穫できる。草さえ引けば手はかからず、葉に細かい毛が生えているので虫がつきにくく、作りやすいという。「ゆがいたら色がきれい。それで水にさらしたら苦みが抜ける。わたしらぁは、漬物にも、炒め物にも、田舎ずしにも、なんにでもするがよね。ええ野菜やと思う」。たくさん採れた年は町内の「十和の台所」などで販売している。

※複層林:成長期の違う大きな木と小さな木が同時に成育している森林

 


【レシピ】榮さん流 昔高菜と鶏肉の炒めもの
1.昔高菜はさっとゆがき、ざく切りにする。
2.鶏肉は適当な大きさに切る。
3.フライパンで鶏肉を炒め、火が通ったら昔高菜を入れて、砂糖、醤油、塩で味をつける。

  

 



本川じゃがいも​
ほんがわじゃがいも
【産地】
いの町本川地区 
【収穫時期】 6月〜7月
【特徴】皮は黄土色で、小さい。中身はやや白っぽく、煮崩れしにくい。


 


土佐のアンデス?の食遺産
 手箱山を望むいの町本川。急斜面の畑は石がごろごろしていて、水田はない。ここに暮らす人たちは、僅かな土地にひえや小豆、とうもろこしを植えて食糧を確保してきた。中でも味のいい芋類は重宝され、本川じゃがいもは日常のささやかなごちそうだった。
 古くから人が住んでいたと伝わる大森地区。川村起久子(きくこ)さん(72)は、夫の両親から本川じゃがいもを引き継いだ。急な畑の土が流れ落ちないように秋にカヤを刈って束にしておき、畑の土の上に被せて、さらに竹で固定する。「そのカヤの間をわけもって、ひとつひとつ種芋を植える。昔の人は耕耘機も使わず辛抱強くやりよった」。梅雨に入り、茎が黒くしなびたら採りどき。石がごろごろした畑から、小粒なじゃがいもがころころころがる。「※ゲジゲジじゃのうて、歯ごたえがあって煮崩れしない。皮のままきれいに洗って、囲炉裏でこんがり焼いて、お味噌つけたら、まぁおいしい」。早い時は6月上旬頃から「本川直売所」で販売している。

【ミニ土佐弁講座】※ゲジ:煮た時に堅い所ややわらかい所がある状態

 


【レシピ】起久子さんイチオシ! 本川じゃがいもの塩煮
1.本川じゃがいもをよく洗って皮つきのままゆでこぼす。
2.半分に切って、新しい水に塩を加えて煮て、冷ます。
3.煮汁を少し残して捨て、焦げ目がつくまで炒りつける。

 

高知の地域の名のつく種 Map
(とさぶし編集部調べ)


このコーナーで紹介した8つの作物に加え、高知県でよく出回っているものを集めました。
参考:土佐の伝統作物(2016年 高知県発行)


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