Posted on 2017.09.24

特集 2

すし自慢 VS.5



安く大量に手に入るおからは、「おたま」や「きらず」と呼ばれる大衆食材。
ハレの日には、刻んだ野菜を加えて甘く味付けし尾頭付きの鯛に詰めた「蒸し鯛」が、普段の日は、小ぶりな魚を酢で締めてくっつけた「たまずし」が、県内各地の食卓の定番だった。


 

 

ウルメのロクヤタ【四万十市】


ウルメのロクヤタ

 土佐の小京都と呼ばれる四万十市中村。ここに、歴史上の人物の名前のついたすしがある。それは、ロクヤタ。「おかべの六弥太きらずでこい」という囃子詞(はやしことば)と共に伝わり、どうも平家物語で薩摩守平忠度(ただのり)を討ち取ったとされる岡部六弥太を指すようだ。女房言葉で、おかべは豆腐、きらずはおからを意味する。一口では食べられない大きいウルメをおからにくっつけ切らずに食べるのも、「ろく」は「きらない」のがお決まりだからだろうか。
 四万十市大橋通の北原文子さん(65)は、鮮魚店に嫁いで義母からロクヤタを習った。「私の生まれた大方(現・黒潮町)にはなかったんですが、中村では定番。もうずいぶん昔から作っていたようです」。
 ロクヤタを作るのは、新鮮なウルメイワシが獲れた時だけ。「マイワシは骨がえらいし、ウルメの方が身もやわらかくて厚い」。頭を落として腹を開き、骨を取り、ゆの酢を加えた醸造酢で締める。「ウルメを浸けた酢は少しまろやかになって魚の風味もしますから、これを生のおからに混ぜるんです。中村はおすしにサバの酢ころしが欠かせないでしょ」。細切りの新ショウガをちらすと、ピリッと味が引き締まる。


北原鮮魚店(四万十市中村大橋通5-3) 0880-35-3304
ウルメのロクヤタはウルメイワシが揚がった翌日だけ店に並ぶ。

 

キビナゴのほうかむり【宿毛市】


きびなごのほうかむり

左から、土佐ひめいちの太田野しえみさん、河原多絵さん、河原梅香さん

左から、土佐ひめいちの太田野しえみさん、河原多絵さん、河原梅香さん

 宿毛湾は年中キビナゴが獲れ、産卵期の春と、稚魚が太り始める秋が旬。宿毛市(すくもし)小筑紫(こづくし)栄喜(さかき)の河原多絵さん(57)は、巾着(きんちゃく)網漁を営む漁師の妻。「昔から、ウルメとか※チュウバが獲れたら、おからのおすしをしよったねぇ」。15年前、地域の味を売りだそうとキビナゴのおからずしを考案した。
 「ウルメよりあっさりしちゅうき都会向き」と、キビナゴを抜擢。一匹一匹手で開き、頭とわたと背骨を取り、酢で締め、「見た目が大事」とキビナゴが白くなる前にあげる。おからに焼いたサバをほぐして加え、酢、砂糖、塩、酒、薄口醤油、刻んだショウガを加えて、中華鍋でしっとりするまで弱火で炒める。個性の強い素材をつなぐ隠し味は、豆乳。「同じ大豆由来で相性がいいし、コクもでる」。しっとりとしたおからを一口サイズにまとめたら、キビナゴをくるっと一巻き。まるで手ぬぐいを被った人のよう。
 口に入れると、つるんとしたキビナゴはもちっとして、おからがふわっとほどける。ショウガとサバのシャリシャリした食感も楽しい。味はもちろん、キラキラ光る宝石のような見た目も評価され、料亭など引き合いも増え、JALのファーストクラスの食事にも採用された。


土佐ひめいち(宿毛市小筑紫栄喜566-66) 090-5914-9174
キビナゴのほうかむりはイベントなどで販売。10月27-29日に高知市で開催されるふるさとまつりにも出店する。

 


土佐弁講座※チュウバ:中型のマイワシ

 

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