Posted on 2017.09.19

特集 2

すし自慢 VS.3

すし自慢vs.3


室戸岬と足摺岬——言葉も違えば味覚も異なる。
しかし、狭い漁師町の家々で大量のすしを作るためか、はたまた船の上でも手軽に食べられるようにするためか、東西の岬には、ぎゅうぎゅうに押したおすしがある。


 

 

こけらずし東洋町


こけらずし

 かつて捕鯨やマグロ漁で栄えた高知の東海岸。東洋町野根は野根川沿いに水田が並ぶ米どころ。家を建てた時に出た材で桶を作り、大きいものは1斗ものご飯で作ったと言われる※こけらずし。野根キッチンの松本善子さん(68)は、「※よばれには絶対で、皿鉢の中央にこけらずしを敷き詰め、魚の姿ずしを高く盛るんです」。家それぞれ自慢の「こけら」があり、婚礼のお祝いのお返しにお皿ごと配った時代もあった。
 味の決め手は、サバ。焦がさないように焼き、皮と血合いを取り除いてゆの酢に浸し、うまみもねばりも強い野根産のコシヒカリにそのまま混ぜる。「冷凍設備のない時代は、サバがなければ、ブリや※ウボゼも使った。アジも上品な味になったねぇ」。桶に酢飯を平たく入れ、甘く炊いたニンジンにシイタケ、玉子焼きを置いて薄い板で仕切り、5段も6段も積み、重石をしてぎゅっと固める。「どれだけ多くのお米を使うかが、ごちそうの証し」。


野根キッチン(東洋町野根丙864) 090-7542-4435
毎週土曜日7:30〜12:00に営業。全国発送もおこなっている。

 

 

つわずし【土佐清水市】


つわずし

左から、さえずり屋の下田泰子さん、榊原もとめさん

左から、さえずり屋の下田泰子さん、榊原もとめさん

 神祭の祭囃子(ばやし)が聞こえる頃、足摺半島の道々にはツワブキの黄色い花が咲き誇る。土佐清水市松尾の下田泰子さん(74)は、「ツワの葉には殺菌作用があるというので、木の板の代わりに昔からすしの間に挟むがです。それに、ツワブキの花言葉は、困難に打ち勝つ。縁起がいい」。かつて足摺地区では一度に3升も入る押し抜きに、ご飯、具、ツワと何段も重ねて、挽き臼のような重石を一晩置き、翌朝抜きとった。「踏ん張ばらんと抜けんくらい大きいき、厄が抜けた、と喜ばれたもん」。験(げん)を担ぐ漁師たちの還暦や厄(やく)抜けの祝いの皿鉢には「山の物」として奥に置かれた。
 「結局小さく切るがやき」と、家庭で日常的につわずしを作っていた松尾地区では何十年も前に押し抜きが小さくなった。ツワを敷き、酢飯を入れ、錦糸玉子と炊いたニンジン、ニンジンの葉を飾り、ツワの葉を挟んで押す。「シンプルなけど、酢飯が売り物。三原村のお米に昆布をたくさん入れて炊き、ハガツオを入れた※酢ころしで味付け。サバよりやさしいお味やね」。


さえずり屋(土佐清水市松尾) 0880-88-0056(榊原)
つわずしは神祭や正月などに地域から注文を受けて作る。

 


土佐弁講座※こけら:木の切れ端のこと。杉板のこけら葺きという屋根もある
※よばれ:宴席・宴会のこと  ※ウボゼ:イボダイ
※押し抜き:つわずしを作る桶のこと   ※酢ころし:すしのだし

 

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