Posted on 2013.03.24

生き物がたり

ニホンミツバチ(ミツバチ科)

ニホンミツバチ(体長約2cm)


 「あれって、なにか祀っているのかな?」

 祠にも見える四角い形のものを特に山間部の道路沿いで見かけるが、ミツバチを飼う箱だとなかなか直感が働かない。小学生の時から父親とオオスズメバチを追い、高校にかけてニホンミツバチを育てた経験を持つ福田安武さん(25)は、出身の愛知県では見なかったし、数多くあるのは高知独特と言う。「豊かな自然とのかかわりの中で、暮らしの一部として自家採取している人が多いのでは」と推理する。

 安芸郡田野町から室戸市にかけて250個近く据えている田所久幸さん(63)は、退職した6年前からはじめた。自然が相手というところに興味を魅かれたという。林業をしていたお父さんの熊市さん(86)が5、6箱飼っていたのを引き継いだ。でも教わったのは、ハチが入りやすい場所・位置だけ。今も試行錯誤の毎日で、「中が見えんものは難しい」と唸る。

 まず、箱の置き場所。南向きでほどよい日陰がある、風通しはいいが強風は防げる、上も下も崖、といったニホンミツバチが好む所を選んで置く。次に、巣になる箱。約30×30×高さ50センチのものを、2センチの厚さのスギ材で作る。箱の中には、蜜が残ったハチの巣を置く。経験的に、古い箱ほど入るし、一度入った箱にはよく入る。いろいろ手を尽くした末に入る確率は3割くらいなので、入った時には「よう入ってくれた」と今でも感動すると言う。

 春に巣を作った箱は秋に採る人もいるが、田所さんはその場で1年以上寝かせる。長く置けばリスクが高まる。スムシや天敵オオスズメバチが侵入してくるし、野山に花が少なくなれば自分たちが蜜を食べてしまう。しかし、酒蔵で勤めた経験がある息子の剛さん(40)は、この時間を重視する。ハチが持つ酵素の働きで発酵が起こり、熟成され、糖度が高くなり腐らなくなるからだ。

 古来からいたニホンミツバチは、自然そのもの。採る蜜も極力人の手を入れないように、と心がける。採るのは1日1箱。8~10列に作られた巣を取り出し、絞ることはせずザルに載せ、垂らして採る。箱の中で糖度が78%まで上がったもの、箱の下ほど花粉やハチの子など不純物が多いので箱の上の10~15センチのものだけを「蜂蜜」として採り、日曜市で販売している。

 ハチが集めた毒花の蜜さえ閉じ込めたまま、発酵の過程をハチに委ねると、花蜜は人が食べられる峰蜜となる。ただ頂くだけのニホンミツバチの蜜は、単に糖度が高い甘さではなく「濃密で、言葉にしにくい美味しさ」と、安武さんと剛さんは口を揃えた。

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