Posted on 2017.03.24

特集関連企画 

高知の森のツキノワグマ

森に生きるゴン太
原作 宮地たえこ/絵 松下 和江/編集 とさぶし編集部

ボクは、ツキノワグマのゴン太。 二十歳だよ。
三嶺や剣山周辺に棲んでいる。
ボクは朝と夕、食べ物を探して山を歩くんだけど最近よく子どもの頃を思い出すんだ。


── ──

冬眠から覚めると、土に落ちたドングリや 木の芽や花を探してお母さんと歩きはじめた。
昔はたくさんあった木の実だけど 今は少ないんだよ、とつぶやいたお母さん。
「なぜなの?」と聞くと おばあさんから聞いた話を教えてくれた。
「昔、人間が山を焼いて スギやヒノキの木を植え そして山の上まで大きな道をつくったの。
わたしたちの仲間が生きる森は 小さくなって、食べ物を探すのも 大変になってきたんだよ 」

 

──  ──
 

山の南斜面に行くと、穴があるツガやケヤキの木が多かった。 
兄さんはすぐお母さんのまねをして何がいるかわからない木の穴に平気で手を突っ込み
ミツバチが飛び出てくると、うまく捕まえた。 
ボクはブンブン飛び回るハチは苦手で穴の底にアリの巣があるのを見つけて食べた。
西の山の水場に行ったときお母さんが川原の大きな石をひっくり返した。 
すると驚いた沢ガニが這い出てきたので、ボクはさっと捕まえた。 
口に入れると、バリバリと音がした。


 

──  ──
 

ボクはヤマブドウが大好きだ。
「食べてごらん」
にこにこしながらお母さんがツルを引っ張った先に下がっていた実。
ほおばると甘酸っぱくて、この味がとても気に入った。
ヤマブドウに似たノブドウやエビヅル、これは少し渋い。
ヤマブドウを見つけるコツも覚えた。
日あたりの良い所で、重なったウツギの木なんかによくツルが絡まっている。
だから、まず木を見つけるんだ。

春から秋まで、ボクたち兄弟はお母さんの後をかけっこしながらついていった。
雨をしのぎ冬眠の時にもぐりこむ岩穴や木株を一つずつ覚えていった。
こうして一年と少し、家族で一緒に過ごし夏が来る前にボクらはひとり立ちした。

ボクには夢がある。
大好きなヤマブドウがお腹いっぱい食べられるようになる夢。
きっとそのときは山には実がなる木が増えてると思うし
ボク以外の動物たちも食べ物に困ることはないだろうから。


このイラストには、三嶺の森の動植物が隠れています。さあ、探してみよう!
動物10種:ツキノワグマ、アカゲラ、イノシシ、ニホンカモシカ、アナグマ、タヌキ、ニホンジカ、テン、ニホンザル、カケス
植物6種:ヤマブドウ、イタヤカエデ、ナナカマド、ブナ、ミズナラ、コシアブラ

 


特集関連企画  高知の森のツキノワグマ


 

広い範囲を移動する

 ツキノワグマはアジアに広く生息していて、日本では本州と四国で確認されていますが、九州では2012年に絶滅したとされました。四国ではかつて幡多郡や石鎚山系など四国の広い範囲に生息していましたが、ここ10年の調査では剣山系で10数頭の確認に留まり、個体数も50頭未満だと考えられています。
 四国のツキノワグマの行動範囲は広く、高知・徳島県境を中心に東西31 km、南北26 km程度の範囲で、標高1000m以上の落葉広葉樹林を主に利用していることがわかっています。


食べ物は草食中心

 ツキノワグマは、人間と同じ雑食で、春、冬眠から覚めると、落下して残ったドングリや草木の葉・芽・花など、夏になると、サクラ類やキイチゴ類の実やアリやハチなど、秋になると、ミズキ、サルナシ、ヤマブドウや、ブナやミズナラの実など、約60種類くらいのものを食べて暮らしています。
 サクラの実、山菜、ウドなど果肉のあるものや、消化がしやすいもので、人がおいしく食べているものが大好き。肉や魚を好むヒグマとは違い、草食が中心で臆病な性格なので人間の気配を感じると立ち去ってしまうことも多いと言います。
 

ツキノワグマが棲める森

 ツキノワグマが生きていくためには、多種多様な食べ物を供給してくれる豊かな森林が広い範囲に必要です。ツキノワグマがいるということは少なくとも高知県、四国山地に豊かな森がまだ残っていると言うこともできます。ツキノワグマが生存している環境は他の多くの生き物も暮らせることを意味していて、豊かな森林を維持することで結果的に地域の生物多様性を守ることにもつながることになります。
 ツキノワグマが生息を続けるには、100頭くらいの生存が必要と言われています。現在の推定数はその約半分。100頭のクマが棲める森とはどんな森なのでしょうか? 〝食〟に焦点を当てて、ツキノワグマの目線で物語風に考えてみました。

 



ゴンタのこと NPO法人四国自然史科学研究センター(須崎市)が2005年~2016年までに12頭のクマを捕獲して個体情報を調べ、そのうち11頭について追跡調査を実施しました。その際、クマにはそれぞれ愛称がつけられましたが、その1頭が「ゴンタ」です。
ゴンタは、2005年の捕獲時で推定7歳。2度、調査のために捕獲されましたが、3度目からはオリのわなに掛からないよう手足を伸ばして、エサだけを食べ逃げする様子が自動撮影カメラで撮影されました。また、他のクマはエサが入った容器をバキバキに壊してから食べることが多いのですが、ゴンタは両手で持ち飲む様子が撮影されています。かしこく慎重なゴンタの性格が見て取れます。
協力:四国自然史科学研究センター 山田孝樹さん


 

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