Posted on 2016.03.24

座談会

『スーパーの女』からはじまる高知のサブカルチャー

スーパーで働く人も、買い物する人も、その大半は女性。つぶれかけのスーパーを立て直すサクセスストーリー『スーパーの女』(1996年、伊丹十三監督)をダシにして、高知のサブカルチャーを女性の目線で語ります。

とさぶし座談会、弘浦和さん、横田恵さん

 


萩原 陽子さん



萩原 陽子さん
高知農業高校 畜産総合科/農場長
【96年頃のわたし】高知大学農学部を卒業したての新米教師。校則違反のルーズソックスで登校してくる生徒に「脱げー!」と取り締まり!


弘浦 和さん



弘浦 和さん イラストレーター
【96年頃のわたし】美大を卒業して帰郷し、帯屋町AVENUEのソニープラザのショップ店員。店では、90cmのルーズソックスがバカ売れしていた!


横田恵さん



横田恵さん 絵金蔵 副蔵長 
【96年頃のわたし】部活に、受験勉強に、忙しい女子高生。放課後は、制服にルーズソックス姿で「帯ぶら」(帯屋町をぶらぶら)が鉄則! 

 


「スーパーの女 Blu-ray」¥4,700+税 発売・販売元:東宝 ⓒ1996 伊丹プロダクション
What's「スーパーの女」?

宮本信子演じるおかっぱ頭のスーパー大好き主婦が主人公。幼なじみが経営する「スーパー正直屋」は「安売り大魔王」にお客を取られ、店も乗っ取られる危機を迎えていた。まずはレジ係として店に入り込み、徐々に店を立て直していく。

「スーパーの女 Blu-ray」
¥4,700+税
発売・販売元:東宝
ⓒ1996 伊丹プロダクション

 

『スーパーの女』と高知のシネマシーン

  

—公開からちょうど20年ですね。

萩原陽子(以下、陽子):一番印象的だったのはお肉のシーン。きれいに見せようと、真っ赤な照明を当てる、発色剤を使う、とあの手この手。畜産を教える立場にいて、「こんな世界があったのか!」。あの映画は20年経っても、今も私の根底にあるんです。

弘浦和(以下、和):とにかく安い、激安大魔王の存在が強烈。でも、今もお洋服なんかも格安競争で、構造は変わってない?

横田恵(以下、恵):テーマがすごく明快で、結末も大体想像がつくけど、おもしろかった。リアクションもオーバーな感じで、今観ると懐かしいテンション。

:映画として迫力があって、奥行きもあり、リアルで重厚感がありました。今だと、カーチェイスのシーンなんか、ブルーシートの前でやっちゃうんだろうな、とか。

陽子:あの頃、街には映画館がいっぱいありましたよね。そういえば子どもの頃に、テアトル土電で『南極物語』観たなー。

:テアトル土電、知らないですねー。子どもの頃は東映まんが祭りとか『ドラえもん』とか観に行ったなー。子ども向けの映画、だいたい2本立てでしたよね。

:そうそう、旭町に名画座があって2本立ての組み合わせがおもしろかった。『未知との遭遇』とシュワちゃんのアクションものとか。『スタンド・バイ・ミー』を観に行ったのに、同時上映してた『モーリス』にハマってしまったり。

:入れ替えもなく、映画館で長時間過ごせたんですよね。

:高知大丸が水曜定休で、水曜は街に人が少なかったですね。私が働いてたソニープラザは輸入物のお菓子や雑貨を置いていて、バレンタインなんか人が押し寄せるようにやって来た。

陽子:当時は学校に「総見(そうけん)」があった時代で、確か、いつも水曜日でしたよ!現地集合、現地解散だったので、映画館から生徒を解き放しても、店が軒並み閉まっているから安心。

:総見? みんなで映画観るんですか?

陽子:『クール・ランニング』を観て白熱したこともありました。総見は都会から離れた学校の生徒にも文化に触れる機会を作るという目的だったと思います。今は映画館に観に行くことはありませんが、学内でやる演劇や歌の上演会が名残です。

:夏休みに、学校の体育館とかで映画の上映があったりしましたね。

:県民文化ホールで1日限りの上映もありました。自主上映というのを観たこともあります。東京帰りだったので、外国で流行ったものが1年遅れて東京へ、高知はさらに1年後みたいな感じで、遅れてるなーって。

:そうそう、映画のVHSビデオのレンタルも1年遅れのものもあった。テレビの民放はRKCとKUTVの2局だけで、『笑っていいとも!』は夕方4時に生放送してるとばかり思い込んでいた。

陽子:私なんて室戸岬の東側の出身なので、民放はRKC1局のみ。ブラウン管を叩いたら、たまにKUTVや徳島の電波が入ったり。

 

街に音楽が流れアートがあった

 

:あの時代って、CDがめちゃくちゃ売れてましたよね。小室哲哉とかのダンスミュージック全盛期で、好きでなくてもヒットチャートをチェックして、お金がないのにCDを買いに走ったり。〝憑りつかれた〟人がいっぱいいた。

:仕事が終わって帰ってたら、ストリートでギター持って歌ってる人も多かった。

:その後、「ゆず」もデビューしましたよね。私はコーネリアスとか小沢健二とか渋谷系を聴いてましたけど、ヒットチャートも追う。どちらも別世界だけど、両方聴いてた。

:HMVとかの東京のCDショップと比べたら、高知は物足りない感じはありました。

:小さいCDショップは演歌の品ぞろえがすごいとか、個性があった。高知はですよね。今はライブのチケットはコンビニで予約するけど、当時はショップの一般販売しかなく、開店前に徹夜までして並ぶ人もいた。奥田民生のコンサートには私も早朝から並びました。
 地元のライブハウスではにキャラバンサライがあった時代で、制服で出入りする人も多かった。知り合いのバンドもあったし、コピーバンドもいっぱいあって。女子はみんな「ジュディマリ」のコピー、一世代前は「プリプリ」で。

:帯屋町公園の近くのダイナーズバーによく通ってて、お店のオーナーが企画するギターやスチールパンの演奏会や、竹林寺のピアノ弾き語りライブとか、よく聴きに行ってました。3階にクラブもあって、ここにも時々踊りに行ったり。高知でサブカルチャーを感じられるというと、あの界隈が中心かな。
 96年って、大木裕之監督の作品がベルリン映画祭の「NETPAC賞」を受賞して、その映像をジーンズファクトリーで流してたり、「M・I」っていう前衛的なよさこいチームを作ってたり。

:ちょうどその頃、デハラユキノリさんの初個展があって、友達に誘われて行きました。まだ立体物じゃなくて、イラストとかの作品が多かった。

:南はりまや町の喫茶店の2階、ホワイトルーム! 私も同じ頃に初めて個展をしたんですよ。

:そんなアートとかサブカルとか知らなくても、ふらっと入って行けましたね。

:街中にギャラリーが多かったですよね。graffitiが高見町にできて、今は北本町に移転しましたけど。

陽子:私は牛の世話に特化した毎日だったので……。ギャラリーには、卒業生が個展をしているからとファウストに行ったことはありますが。

:今はそういうふらっと入れる雰囲気の場所とかギャラリーって少ないんですかね。

:はりまや町のプクワとか、須崎市の川村雑貨店とか。雑貨屋さんにギャラリールームがありますよね。

 



アテネ五輪が開幕し、日本は柔道で男女とも金メダルを獲得。街中には茶髪、ミニスカ、厚底サンダル姿のアムラーが多数出没。たまごっちで暇をつぶしていた。
月9ドラマ「ロンバケ」が大ヒット、ミスチルの「名もなき詩」は230万枚のミリオンセラーを記録した。

 

高知のメイン&サブカルチャーとは

 

:96年当時、妖怪雑誌『怪』が創刊したり、水木しげるのマンガとかあって見たりしたけど、決してメインじゃなかった。でも、20年経った今、すごいブーム。あれはサブカルだったんだろうか?

陽子:サブカルチャーって、年代でも違いますよね、東京と高知など地域でも違うし。

:そういう、ダンスミュージックと渋谷系みたいに、メインとサブが存在してたらわかるけど、区切りがないと「サブ」がわからない。

:サブって、最近はオタク文化を総称したりもしますよね。

:私は仕事の世界でも趣味の世界でもサブカルチャーにどっぷり浸かっているはずなんですが、そんなに意識しないですね。

:でも、絵金って当時は異端=サブだったけど、今は立派なメインカルチャーじゃない?

陽子:高知ってサブカルチャーを受け入れてくれる気質があると思いませんか? 個性的でも否定しない、逆に応援してくれて「いいね!」ってなる。だから「サブ」を探しても見つからない。

:その〝サブ〟って多様ってことですよね。もともと高知には、多様性を認める風土がある。

:確かに、おもしろければ認める。

陽子:高知のサブカルって聞いて思いついたのは、イタドリ!

:うちのお母さんなんか、時期になると狂ったように採りに行って、語りだす。

陽子:決してメインディッシュではない。すごいサブだけど、高知の食卓には絶対必要。日曜市にも売ってますよね。カルチャーという意味では忘れてほしくない。

:山菜のお寿司とか、すごくきれいでクオリティが高い。

:大きなスーパーでは売ってなくて、地元の小さいスーパーとかにはあるし、お祭り会場なんかでは婦人会の人が腕まくりして売ってる。

陽子:7月の絵金歌舞伎の時のお弁当も山菜のお寿司ですよね。

:土佐町の百万遍祭りに行った時も、なぜか田舎寿司を出張販売してたり。

陽子:少し酸っぱいものもあれば、ユズの香りと酢の効き具合が違うものもあるけど、不思議とハズレがない。農業高校でも南国市の女性たちが講師に来てくれて、田舎寿司から芋ようかんまで作る授業があって好評。

:山菜も田舎寿司も今でこそ買えるんでしょうけど、元は野に生えているもので、「※おきゃく」の時に出てくるもの。とても高知らしいけど、日本から見たらメインじゃない。でも、都会のようにお金で買えないところに文化が宿っている。うちのお母さんなんか、血が騒ぐというか熱狂する。あれは本能であり、文化だと思う。

:今年はフキノトウが早かったとか、話題に事欠かない。ゼンマイとか採りはじめたらやめられない。

:手を真っ黒にして皮を剥いで、全部人にあげて、で、またどこかに遠征してまでイタドリを採りに行く。

陽子:確か、徳島にも行くんですよね。食べる文化がないから、取り放題!

 

高知流無駄を楽しむ法
 

—文化に触れる接点は映画やアートだけでなく、日常の生活の中にもある?

:文化ってやっぱりできあがったジャンルとして語られるので、その対象がわかるかわからないかになってくる。

:かつては街中にあった現代アートも、今はどこへ行き、向かっているのか。身近じゃなくなったような気がします。

陽子:でも、街には進出してますよね。広場や公園にアートがあったり……。

和:身近な文化を見直してみるのもいいな。

:歩くだけで楽しい町っていいですよね。私らの世代は「帯ぶら」って言葉があって、ショッピングしなくてもワクワク感が街にあった。今、新しい図書館とか博物館ができてますけど、もっと路地裏を歩いておもしろい街になれば……。帯ぶらなんて、一見無駄なんですけど。

陽子:ほんと最近、無駄がない。

:スマホに目的地を入力すれば、そこに連れてってくれる。

:ふらっと寄ってみたらおもしろいとか、ない。

陽子:レコードのB面ですね!

:聴いたら、A面よりこっちの方がいい!みたいな……。

:学生の頃とか、辞書を引いたら、探していたものだけじゃなく実は違う意味を持つ言葉の説明があって、おもしろいなーと興味を持つということがあった。スマホの検索って、無駄がないですもんね。

陽子:自分って意外と自分のことを知らなかったりするから、意外な曲に涙が流れたりすると、違う自分に気づくということがある。今の高校生を見ていて、そういう体験が少なくなった気がする。

:子どもの頃、おきゃくの席に混ざって、酔っぱらいに説教されながら、皿鉢をおかずにご飯を食べた。あれも、実は大事なこと。県外の女の人は結婚して子どもができたら飲みに行かない、若い人も飲まない。でも人生には、すごく必要な余白って、ある。

:ほんと、高知は飲み会がマスト。高知の幸福度が46位っていう調査があったけど、同じく最下位の大阪、沖縄、高知には共通点があるんです。人に聞かれてもないのに、「高知出身」って自分の故郷を言う。違っていることに対し、堂々としている。

陽子:私は室戸の漁師の娘なんで、朝から刺身を食べ、神祭も三日三晩やる。おかげで、お酒は飲めない体質だけど、歌って踊って朝まで飲む人に付き合えます!  心を解放したり、寒い冬に体を温めたり、だから飲めなくてもお酒は否定できない。

3人:今度、いつ飲みに行きます?

 


土佐弁講座   おきゃく:酒宴のこと


 

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