Posted on 2015.06.24

特集

8月の日曜市

真っ青な空。シャン、シャン、シャンと鳴子の音。
夏のお城下はにぎわいを増す。
日曜市は朝どれの野菜から土佐沖で獲れた魚の干物花や金魚まで何でもそろう。
土佐弁だらけの会話があふれここには8月だけの〝特別〟がある。

 梅雨が明けると、灼熱の夏が到来する。平野部の田んぼは黄色に染まり、早くも稲刈りが始まる。「稲刈りせんといかん」「露地野菜は虫にくわれるが」と出店を休むおばちゃんもいるが、山間部や高冷地の露地野菜や、夏の果物が待ってましたとばかりにどっさり並ぶ。汗を流して歩く人のために冷やしあめやかき氷を売るおばちゃんもいる。


 8月限定のフルーツといえば、永野佐千代さん(39番)のブルーベリー。標高300mの高知市重倉の畑で、甘味が強く、濃厚な味わいのラビットアイという品種を中心に栽培する。生食用、ジャム用、ジュース用といくつもの札がかけられ、どんどん売れていく。店の後ろから顔を出したのは、はりまや町でケーキ店を営む勝木田さん。予約していたブルーベーリーを受け取るついでに、観光でやってきたお客さんに説明する。「これは農薬を一切使ってないブルーベリー。このブルーベリーを使ったうちのタルトも夏の定番商品ながです」とにこり。無農薬で栽培するため、毎日畑に出て、虫を取ったり、草を引いたり苦労が多い。「鳥も来るきネットを張っちゅうがやけど、※まっことてこにあわん」と永野さん。甘い香りに誘われて、次から次へとお客さんが寄ってくる。


高知県産ナス

【Column ①  ナス 】
高知県の生産量は全国1位を誇る。長ナス、米ナスなど品種も多い。
県内で最も生産される品種は「竜馬」。
極早生品種で果色は濃黒色、収量性が高くて品質もよく、小ナスとしても流通している。


 

 山崎好子さん(77番)の露地のイチジクも登場。高知市朝倉の田んぼに木を植えて、夫婦で栽培している。「ハウスもんより露地もんの方が甘いがよ。陽がよう当たるきやろうか」。太陽の恵みをたっぷり受けたイチジクは、手のひらに収まらないほど。「ドーフィンいう雨に強い品種なが。最初にできる実はおっきいで。こんな※ふといがは見たことないと、お客さんもびっくりよ」。
 
 ここは日曜市のはじまり、1丁目。朝早くに売り切れるたくあんが人気の店もあれば、綿の手袋が充実した店も。歩きながらジンジャエールを飲んだり、いも餅で小腹を満たしたり。  

 高知の夏の味をかみしめて、日曜市の散策がはじまった。 

 


土佐の日曜市2丁目

 

 日曜市2丁目は最も短い通り。有機農法を学ぶ土佐自然塾のお店や、大豊町怒田で農業を営む若い夫婦も出店する。

 松田博さん(122番)は、仁淀川町池川で育てた昔ながらの野菜を持ってくる。夏の定番は、直径8㎝、長さ25㎝くらいの昔キュウリ。「甘みがあって、青臭さが少ない。そのまま、ぽりぽり食べれるがよ。川エビと炊いても※えいわねえ」。最初は青く、だんだん白くなり、最後は褐色に熟し、そこから種を採る。先代からこの品種を栽培してきた。「健康な土から生まれたき、栄養分は普通のがより、倍くらいある。食べたら元気が出てくるで」。

 常連さんが足を運ぶ老舗の昆布屋・泉谷和さん(126番)。「うちは戦後、大阪から移ってきて高知で昆布製造を始めたがよ。高知ではパンチのあるラウスが人気やねえ。夏はね、加工場だけで出る上花切昆布、板こぶの切れ端よね。これを刻んで酢の物に入れたら、えいダシが出ておいしいがやき」と、夏にピッタリの料理を教えてくれた。

 


高知県産ぶしゅかん

【Column ②  ブシュカン 】
ユズやダイダイなど酢みかんの一種。高知県内で幅広く栽培されていて、夏が旬。
カツオのたたきや焼き魚、お酒などに、きゅっと絞ると爽やかにいただける。
メヂカの新子のシーズンには、絞り汁だけでなく皮を少し削りかけると美味。


 


土佐の日曜市3丁目

 

 日曜市で印象的な匂いと言えばお漬物。3丁目の野村慎一さん(193番)は、自分で育てた大根や白菜を使った古漬けを作っている。1年物から、なんと6年物までが店に並ぶ。時を重ねた漬物ほど酸味がまろやかになってくる。「これは春野の弘岡カブの2年物。代々種を採って育てたかぶを木樽に詰めて重石をするろう。ほいたら、こんなにペラペラ」。人の顔くらいある弘岡カブが、手のひらに収まるほど。「この頃流行りの植物性乳酸菌やきね。やっぱりこの木樽に漬けんとこの味にはならん。※あてらの財産よ」。すっぱい香りに胃が刺激される。

 


土佐の日曜市4丁目

 

 焼き鳥やかき氷など、食べ歩きが楽しい4丁目。氷の中でフルーツを冷やした果物屋さんも。

 いの町の森倫子さん(278番)のお店はブドウパラダイス! 定番のふじみのり、ピオーネ、シャインマスカット、紫苑など、夏から秋にかけて、徐々に品種が入れ替わる。「親の代はキャンベルとかベリーAだったけど、ここ10年で20種ほどに増やしたが。うちは市場やなくて日曜市に出すががメインやき、ちょっとばぁでも珍しいもんがあった方がえいろう」。通りがかりのお客さんは「安芸クイーン」「ハニービーナス」「瀬戸ジャイアンツ」と書かれた札を見て「これどんな味?」 と興味津々。

 日高村の山本鋭一さん(297番)は、昨日獲れたアユが目玉。「家が仁淀川のすんぐそばやき、夏は火振り漁で獲るが。天然ものを※すっと食べてもらいたいき、土曜に獲ったがを持ってくるがやき」。網にかかったテナガエビや、大きなはさみにびっしり毛の生えたモクズガニが登場することも。

 


高知県産リュウキュウ

【Column ③  リュウキュウ 】
かつて琉球から伝わったと言われる、サトイモ科ハスイモ。
大きいものは人の背丈ほどに成長する。
シャキッとした歯ごたえで、酢の物やサラダ、刺身の添え物など幅広く使われる。田舎ずしのネタになっていることも。


 

 


土佐の日曜市5丁目

 

 冷やしあめからはじまる5丁目は、日曜市の中で最も長い通りでもある。

 この時期、山中明子さん(389番)のお店には早くも新米が並んでいる。「ミルキークイーンいうてね、小粒で皮が薄いき玄米でも食べやすい。でも収量が少ないお米やき、あんまり作る人がおらんがですよ。でも私はこれがおいしいと思うが」。夫婦で作りはじめて15年。日曜市から口コミで広がり、首都圏のレストランにも直送する。

 筒井延代さん(391番)は吾北で作ったトマトを並べる。「うちは標高450mくらいやろうか。夜は空いっぱいに星が見えるがよ」。小ぶりで楕円形のアイコという品種が主力。「山で湧いて岩を通ってきた水は、おいしいと言われちゅう。ほんで農薬も化学肥料も使いとうないがよ」。
 
 谷口幸さん(343番)の店先には、キビが並んでいる。「黄色いがは地キビ。スイートコーンのような洋キビよりも歯ごたえがあって、噛んだら噛むほど、お味がするがよ。茹でたがもえいけど、焼いても香ばしいて、妙においしい」。隣には白いモチキビもある。「その名のとおり、もちもちした食感なが。赤土の排水のえい畑で作りゆうきやろうか、うまみがある」。
 

恒石隆正さん(350番)は、空港の近くの畑で育てたサトウキビで作った自家製の黒糖を並べる。「うちは農薬も化学肥料も使わんと栽培しゆうき、えぐみがないろう。ミネラル豊富な自然食品やき、暑い時もおなかがすいた時も、ひとかけ食べたら元気が出てくるで」。

 お客さんがしゃがんで何かを覗き込んでいる。近くによると、たらいに何十匹ものカニ!! 浦戸の漁師・永野廣さん(438番)は「うちのがはふっといエガニで! 夏はビールにぼっちり!」。それを聞いた観光客風のお客さんは「カニは冬場やなかったっけ?」と首をかしげる。「浦戸湾は年中通してエガニが獲れる珍しい場所なが。夏はオスのエガニで筋肉の発達した身がうまいし、冬場の卵を持ったメスのミソは甘味があってまっことえい」。ほー、と感心したお客さんは2杯お買い上げ。

 


高知県産ミョウガ

【Column ④  ミョウガ 】
ショウガ科の多年草。
高知県はハウス栽培が盛んで年中売られているが、夏には露地物が出回る。
薬味や添え物としてだけでなく、酢漬けや天ぷらにしてもおいしい。


 


土佐の日曜市6丁目

このイラストは日曜市の雰囲気を描写することに努め、取材したお店など一部のお店で構成しています。

 

 古道具が並ぶ6丁目とひろめ市場の間にも、まだ日曜市が続いている。

 7丁目の大崎登美子さん(630番)のお店は、夏もタケノコが並ぶ。「水煮にして缶詰にしちゅうが。塩も調味料も使うてないき、好きな味付けにできるがで」。隣にはなにやらアケビのような果物も。「これはポポーというが。完熟したらバナナのようなマンゴーのような。皮をむいてそのまま食べるがやけど、好きな人はプリンにしたりもするがやと」。

 池澤淳子さん(634番)は、でっかいカボチャをゴロゴロ並べている。「これはねえ、栗味カボチャ。実が成ってから40〜50日、畑で完熟するまで置いて、さらに12℃の倉庫で1か月寝かせて追熟させるが。もう、甘さが違うがやき」。老舗旅館やカフェの店主も買いに来る。


 まさにとれたて、旬の野菜や果物に海産物がずらりと並ぶ。作った人からその栽培方法やおいしい食べ方までも教わりながら買い物ができる日曜市。お散歩がてらに歩いてみれば、どこか懐かしい風景の中に新しい発見が待っている。

 


土佐弁講座

まっこと:ほんとうに/てこにあわん:手におえない/ふとい:大きい/えい:良い
あて:わたし/すっと:すぐに/品がみてた:商品がなくなった/いながら:そのまま
たるばあ:十分に、あきるほど/忘れなや:忘れないでね/めっそ:あんまり/じこじこ:少しずつ


 

あき

日曜市のイラストを描いてくれました、とくひらようこさんを紹介します!

 


とくひらようこ

とくひらようこ

1986年 高知県生まれ。高知県在住。
2011年 国際デザインビューティカレッジ グラフィックデザイン科卒

—主な制作活動—
イラスト、挿画、ワークショップ、フライヤー等デザイン一般
高校卒業後、石川県金沢市でTSUTAYAと映画館のアルバイトを掛け持ちし、多種多様な文化芸術に触れデザイン関係の仕事に興味を持つ。
帰郷し専門学校で本格的にデザインを学んだのち地元企業の広報部門で広告全般及びPOP、広報誌などを制作。2014年よりフリーランス。
とくひらさんの作品はここから見られます!


 

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